第9話 少しずつ、前へ前へ

 恵太郎は翌日、体重を測る。

100キロから三日でどれだけ減っているのかは気になるところだが。

体重計に乗った結果は。


(……99.5キロ……まだまだこれからかな。)


0.5キロ減っただけだったが、ダイエットとはそういうものだと恵太郎はポジティブに割り切り、またランニングを開始した。


(絶対痩せるんだ……!! まだ始まったばかりだ、辛抱だ、辛抱……!!)


恵太郎は、凛花に振り向いてもらうために始めたことなので、絶対にめげるわけにはいかなかった。

今日もまた、同じようにカロリー制限も徹底する。

「イシンヴァリア」のオープニング曲を聴きながら恵太郎は直走っていった。




 一方凛花は、自身の身体の変化に違和感を覚えていた。


(アレ……?? なんか、メイクの乗りが……悪い……??)


自身のSNSで公開するためのコスプレをしている最中なのであったが、どうもメイクの最中の肌の微妙なカサつき具合が気になって仕方がなかった。

いつものメイクの感覚が上手くいかない。

それはコスプレイヤーにとっては致命的だった。


(……疲れてるのかな……?? でもご飯とかは食べれてるんだよな……なんでだろ……)


凛花は違和感が全く拭えなかった。

ただ、今日公開したコスプレも高評価を多く貰ったのだが、凛花は満足が行くようなコスプレができなくなっていたのであった。




 恵太郎が着実に痩せていくのに対し、凛花はスランプ期に陥りかけていたのであった。

この事に恵太郎が気づくはずもなく。

凛花は孤独にもがき、苦しむ事になるのであった。

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