第34話 響と夕飯を食べる
結局、夕飯を作るまでの体力が戻ってなかった響のために夕飯を作って一緒に食べてから帰ることになった。
「ごめんね。夕飯まで作ってもらって」
「どうせ、家に帰っても一人だからな。一人分も二人分も変わらないから。まぁ、材料が何もないからおかゆくらいしか作れないけどな」
「ううん。それでも充分嬉しいから。ありがとう」
「てか、もう寝てなくて大丈夫なのか?」
響はリビングにあるソファーに座って、おかゆを作っている俺のことを見ていた。
「うん。せっかくだから、柏君が料理してるところを目に焼き付けておこうかと思って」
「まぁ、いいけど無理はするなよ」
「分かってるって」
そう言って笑う響の視線を感じながら、お昼とは違うおかゆをさっと作りあげる。
「ほい、お待たせ」
「わぁ~。このおかゆも美味しそうだね!」
「付け合わせのおかゆだけどな」
「うめぼし、鮭フレーク、ほうれん草、たまご、めっちゃ美味しそうなんだけど!早速食べてもいい?」
「どうぞ」
響はスプーンでおかゆをすくうって、ふぅふぅと冷ますとパクっと食べた。
「ん~!美味しい!何このおかゆめっちゃ美味しい!」
「そりゃあよかった」
「これなら何杯でもいけそう!」
「明日の朝ごはんでも食べれるようにたくさん作ったらおかわりしてもいいぞ」
「本当に!?何から何までありがと!」
「どういたしまして。てか、気になったんだけど。ちゃんとご飯食べてるのか?」
俺がそう言うと、響は目を逸らして「た、食べてるよ……」と言った。
「食べてないんだろ。冷蔵庫にあまりものが入ってなかったし」
「食べてるって、おにぎりとかお味噌汁とか……」
「毎日?」
「うん……」
「そりゃあ、栄養偏るわけだ」
「べ、別にいでしょ!料理はあんまり得意じゃないの!」
「なんか意外……」
「悪かったわね!料理が下手で!」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに響は言う。
「ほ、ほら、ラブコメのヒロインは料理ができないって相場が決まってるでしょ!?」
「普通は料理上手なんじゃないか?」
「細かいことはいいの!?」
まだ冷めていないおかゆを口に運んで「あっつ!」と声を上げた。
「何やってんだよ」
俺は冷凍庫から氷を取り出して響に渡した。
「ありがとう」と言って俺から氷を受け取った響は唇にあてた。
「なぁ、もしよかったらだけど、俺がご飯作ってやろうか?」
「ぜひお願いしまふ!」
「しまふ?てか、即答だな」
「当たり前じゃん!柏君の手料理が食べれるんだよ!こんなチャンス逃すわけないじゃん!」
しまふ、の件を華麗にスルーした響はテーブルから身を乗り出してた。
「でもいいの?柏君大変じゃない?」
「さっきも言ったけど、一人分も二人分もそんなに変わらないから」
「じゃあ、本当にお願いしてもいい?」
「うん。九条さんがいいならだけど」
「ぜひお願いします!」
「了解」
響は今度は噛まずに言った。
「今度は噛まなかったな」
「う、うっさいわね!」
「まぁいいや。で、どうする?ご飯はどっちの家で食べる?」
「柏君はどっちがいい?」
「楽なのは俺の家だな。調理器具もあるし……」
「じゃあ、柏君の家で!」
「そんなに即答していいのか?」
「いいよー!私はどっちでも気にしないから!」
「呑気だな……俺も一応男なんだが?」
「もちろん、分かってるよ。私はいつでも襲われる準備はできてるよ?」
そう言って響は妖艶な笑みを浮かべた。
「風邪で頭でもおかしくなったのか?」
「なってないから!」
「そうだったな。九条さんはいつも頭がおかしいんだったな」
「もぅ!私が襲っちゃうよ!」
机をバンっと叩いて顔をグイッと近づけてきた。
「ごめんって、冗談だって」
「明日から柏君の家に行くからね!いいね!」
「分かったよ」
その日はおかゆを食べ終えるとすぐに自分の家に帰った。
あのままずっと家にいたら本当に襲われかねなかった。
もちろん、襲われてはいない……。
響はおかゆを食べてすぐに眠ってしまったからな。
机の上に付箋を貼って俺は響きの家を後にした。
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