第3話 事情聴取

 翌日、昼休憩に俺たちは動くことになった。

 

「で、なんでお前がついてきてんだよ」

「だって、なんか面白そうじゃん!」

 

 連日の徹夜で目の下に少し隈を作った渉が言った。

 隣を歩いている響が心配そうな顔で俺のことを見上げていた。


「星さんに話したの?」

「いや、話してない。こいつが勝手についてきてるだけ」

「なに二人でこそこそ話してんの~。俺にも教えろよ!」

「て言ってますけど、どうしますか?」

「まぁ、協力者は多い方がいいだろうから話してもいいだろ」


 俺は渉に事情を説明した。


「なるほどね~。あの大野がね~」

「そう言うわけで、これからその生徒に詳しい事情を聴きに行くところ」

「で、その生徒のことは分かってるわけ?」

 

 渉にそう言われて、俺と響は顔を見合わせて「あっ」と言った。


「あはは、誰に聞くつもりだったんだよ」

「先生に聞くの忘れてた」

「まぁ、そう言うのは俺に任せろ」

「何をするの?」


 渉はニッと笑ってVサインを作った。


「俺の人脈をなめんなよ~」

「頼んだ」


 渉はポケットからスマホを取り出して、次々といろんな生徒に連絡を入れていく。

 その様子を見ていた響はポカンっとしていた。

 

「星さんは何をしてるの?」

「見てれば分かるよ」

  

 しばらく待ってると、渉が、わかったぞとスマホを見せてきた。


「許可も得といた」

「さすがだな。ありがとう」

「後で、アイスおごりな」

「了解」

「じゃあ、行こうぜ。時間は有限だぜ」

「あの、ちょっと待って!なにがなんがか分からないんだけど……」


 困ってる響に俺は軽く説明をする。


「渉はこの学校に友達が五百人以上いるんだよ」

「え!?」

「その人脈を使って、大野さんを見た生徒を見つけ出してくれたってわけ。ちなみにその生徒が渉の友達だったらしいから、許可も取ってくれたって」

「そういうこと!ほら、二人とも三組に行くぞ」

 

 一番ノリノリな渉の後に続いて俺たちは三組に向かった。

 三組の教室の前に到着すると、情報を提供してくれる生徒はすぐに出てきてくれた。

 その生徒は俺たちと同じ中学で渚と仲が良かった生徒だった。

 三人とも彼女のことは知っていたので、話はスムーズに進んだ。


「じゃあ、そのゲームセンターで見たってことね」

「そうなの。声をかけようかと思ったけど、隣にガラの悪い男がいて怖くて声がかけられなかったの」

「その後はどこに行ったか知ってる?」

「ごめんね。それは分からないの。ほっとけないと思って相川先生には相談したけど、自分で追及するのはなんだか怖くて」

「賢明な判断ね。ところで、その相手の男がどんな見た目だったか覚えてる?」

「う~ん。遠めだったからあんまり分からなかったの。金髪だったのは覚えてるんだけど、後は『北園きたぞの高校』の制服を着てたくらいかな」

「北高か。それはちょっと厄介だな」


 俺がそう呟くと響が聞いてきた。


「どういうこと?」

「北高って言えば、不良が多いことで有名な学校だ」

「そうなんだ」

「下手に関わると後で何されるかわかったもんじゃないな」


 渉も北高の噂を知っているらしい。

(九条さんは関わらせるべきではないな。明らかにターゲットにされそうだし)

 俺は響に気づかれないようにこっそりと解決しようと思った。

 

「渚はそんなヤバい高校の人と付き合ってるの!?」

「どうだろうな。そこはまだ分からない」

「ねぇ、もしも何かヤバいことに巻き込まれているんだとしたら助けてあげて!」

「もちろん、そのつもりだから安心して」


 昼休憩をの終わりのチャイムが鳴り、情報提供をしてくれた女子生徒との話はそこで終わった。

 俺はどうしようかと今後の展開を考えながら教室に戻った。

 

☆☆☆


 

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