夏が燻る ~ 源宛(みなもとのあつる)と平良文(たいらのよしふみ)と合戰(あひたたか)ふ語 ―「今昔物語集巻二十五第三」より― ~
四谷軒
01 燻(くすぶ)る
最初は――
平安時代。
中期。
武蔵野。
夏。
荒川をはさみ、隣り合う地を領する
一人は、
一人は、村岡の
領土を接する者の常として、あるいは水を争い、あるいは収穫の多寡を競い、次第に次第に、
ある日。
夕顔に水を上げている老人、
「
「何じゃ」
「
幼き頃は、弟の
それに嫌気が差しての、この村岡への隠棲であったが、それでもこうして、人と人との争いが起き、巻き込まれる。
「……
そら来た。
同時に、夕顔に
結局は郎等同士のつまらぬ争いに
水だの取れ高だの、燻ぶらせているのは郎等だ。
その郎等同士で、埒が明かないからこそ、こうしてお互いの棟梁である、
「言わせておけば良いではないか。
「いえ……」
郎等は口ごもる。
その沈黙は、だが、新たな郎等の登場によって中断される。
「良文さま!」
「何じゃ」
「
「何と」
隣地の領主、
若い武士だという。
まだ二十になるか、ならないかと聞く。
「この機を
この
「それならば、まだ道はある……」
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