アーカイブ:十三段家の歴史

 あっ。澪とお繋がりになった六代目様の魂を持つお方じゃないですか。見に来て頂けたんですね。この十三段トミタ永鉠郎エイシロウ、大変嬉しく思います。いやぁ、誰も来てくれなかったらどうしようと、思っていたんですよ。ふゥー。安心した。

 えー、私、普段は時空認智学の研究をしております。時空認智学というのは、時空や次元における認智の外側の領域についての学問で御座います。我々にとっての貴方様、貴方様にとっての我々が何故繋がる事が出来るのか、何故繋がったのか、それを研究する学問です。

 本題に入りましょう。解説だらけの文書なんて誰も読みたがらないのに、貴方は来てくださった。しかもこれ多分小説の形で読まれていますよね? 解説だらけの小説とかクソ面白くないですよね? でも我々と貴方との繋がりが、どうも今回は小説という形のようなので、こればかりは、仕方がありませんね。

 ぶっちゃけ飽きたら途中で止めて頂いて構いませんからね。


 さて。十三段流の歴史は古く、その源流は飛鳥時代の呪術師となります。平安の時代に入り、陰陽道や今では誰も名前を呼ぶ事が出来ない、認智の外側に行ってしまった呪術などを体得していき、鎌倉武者達の体術などにヒントを得て、さらに今から五百年前、初代師範十三段獅郎が夢で見た流れるような太刀筋で止まない斬撃を繰り返す技を実現させたのが、十三段流戦闘術であります。

 さて、先ほどチラリとご説明致しましたが、認智の外側と言うものがあります。これらは我々や貴方がどう足掻いても見る事も触れる事も出来ないけれど、確かに存在する概念です。この領域を使い、我々は貴方と繋がっているのです。


 貴方が我々をどう認識しておられるかは我々には確認のしようがありませんが、多分今こちらのアーカイブや澪の様子をお読みになっている貴方はカクヨムという小説投稿サイトでこのアーカイブを見ていると思われます。こちらの世界でのヨミカキと同じモノであると推測されます。多分、おそらく、きっと、そうなんじゃないかなぁくらいの認識ですが、それくらいは探知する事が出来ます。


 話は変わりますが、我が家の可愛い可愛い次男の堅慈郎くんがですね、ヨミカキにこっそり小説を投稿していたんですよ。これがまあ、えっと、その、親バカフィルターを外せば、もっといろんな世界やいろんな本を読めとしか言えないシロモノなんですけど、本人が楽しそうなので毎日読んでいます。

 『レジェンドオブダークネスブレードドラゴン』、その内面白くなるかもしれませんので、面白くなったらアーカイブの形であげておきますね。


 それはそうと、私のSNSアカウントに、自称小説家の方がフォローしてくださったんですよ。ところがこの方、ご自分が投稿なされた思想とか哲学とかを暇さえあれば再投稿なさっておられて、しかもなんかオンラインサロンとか募集されてるじゃないですか。この方の本当のお仕事、なんなのでしょうね。私、とても気になります。


 話が逸れましたね。何故我々十三段家がこのような異世界接続能力を得たのか、何故私達家族はハンバーグにされてしまったのかについてご説明致します。


 これは十三段流戦闘術が産声を上げる直前の話です。この頃、狐石村には陰陽師の生き残りと心の優しい妖怪が仲良く暮らしていました。彼らは元々人間の社会と距離を取りつつ、魔物が蔓延る乱世になると、正体を隠して魔物や悪い妖怪を退治して生活をしていました。

 そんな狐石村の外れにある剣術の道場に住む十三段獅郎様と娘のみと様、そして道場の隣の神社に住む狐の妖怪ヒナコさんの三人を中心としたグループが、新しい剣術の流派を立ち上げようと日夜修行と研究の日々を過ごしていたある日の事・・・・・・夜中、道場の外に何者かが突然落ちてきました。声からして男だと思ったそうです。しかしその姿は人間のような形のゴキブリだったと言われています。

 その者は、ひどく弱り果てていて、そのままでは死んでしまうように思える程でした。

 それを見つけたみと様とヒナコさんは、彼を介抱しようとしましたが、彼は初めはそれを拒んだと伝えられています。

『我は異界宇宙より降りてきた闇の妖精コマセール族の者である。この星にて身体を休め、再び永劫の争いが待つ異界宇宙へと旅立つ。我はあなた方の宇宙から存在を否定されし者である。あなた方が我を認識出来るのは我の力が弱まったからである。挨拶も無しにあなた方の前から消えるかもしれない。そのような礼儀に欠ける行為を我は好まぬ。我に関わらないでおくれ』

 彼は、だいたいこんな事を言ったそうです。

 後に分かった事ですが、彼の言う異界宇宙とは、私達にはそうとしか聞き取れない認智の外側の単語だそうで、本当の名前は別にあるとの事です。

 しかし、このゴキブリ星人、根っからの武人であり、なんだかんだ獅郎様やみと様、ヒナコさんと仲良くなってしまい、『これで何度目なのだ。我は一億年も生きていてこんな事も学習を出来ないのか』と悔やんだと言います。

 しかも、これは彼が一億年も生きていて初めての事だそうですが、なんと人間との間に子供が産まれてしまいます。そう、その時には既に十三段流戦闘術二代目師範となっていたみと様との子供です。この時、ゴキブリ星人は十三段家の婿となり、十三段眞慈と名乗るようになりました。

 めちゃくちゃ関わってますよね、コレ。本当に一億歳の闇の妖精なのだろうかと、我々一族は時々疑問に思います。

 時を同じくして、ヒナコさんもまた四匹の可愛らしい子狐を産みました。その長女うしお様と、みと様眞慈様の長男礼司様は幼き頃から仲が良く、やがて二人が十三歳になると結婚をする事になりました。

 この結婚式の日に、異変が起きたのです。

 

 眞慈様によれば、この宇宙に存在する全ての生命体には、宇宙の均衡を破壊し、リセットするか進化するかを促す存在に変異するシステムが存在するのだそうです。これはまだ人類には発見出来ていないだけで、誰もが持っているシステムです。当然、私にも、四代目様や六代目様にもです。そして、そのシステムが産まれた背景には、眞慈様の御家族や、宿敵としている光の妖精などの、呼吸をするだけで宇宙を物理法則ごと破壊する超越者達の存在がありました。

 宇宙の、とある概念は、彼ら超越者を排除し、異界宇宙に閉じ込めた結果、宇宙は停滞し、生命は精子程度までしか進化をしなくなりました。

 その概念に思考があるかはわかりませんが、システムは全ての生命の遺伝子に・・・・・・超越者レベルとはいかなくとも・・・・・・『宇宙を破壊する怪物に変異する』という情報を与えました。

 その結果が現在なのです。


 さて、話が逸れたようで実は逸れてない少し逸れた話をしましたが、ヒナコさんはこの変異体として、選ばれてしまいました。結婚式の最中、姿形が異形の化け物狐へと変異してしまったのです。二本の角と、十三本の尻尾を生やし、人でも獣でも虫でも魚でも無いようでいて、それら全てでもあるかのような姿だったと伝えられています。

 これはうしお様が眞慈様の血を引く礼司様と交合をしたからと結論付けられていますが、うしお様を除いたヒナコさんの三人の娘と、妖力で生み出した二百の眷属は、変異体となったヒナコさんの力に飲み込まれ、人々を襲う鬼狐となってしまいました。

 悪しき妖怪は滅ぼさなければならない。狐石村の掟に従い、十三段流の人々はヒナコさんに戦いを挑みましたが、相手は宇宙を破壊する存在ですので、勝てる見込みはゼロでした。ヒナコさんの手により獅郎様、みと様、礼司様、うしお様が殺され、残ったのは眞慈様と、後に四代目となる次男宗慈様でした。眞慈様はその場で三代目師範を襲名し、ヒナコさんの尻尾一本を狐石神社の地中に埋め、そのまま宇宙の最果てへとヒナコさんを連れて飛んで行きました。

 三代目眞慈様は一晩と経たず地球に戻り、宗慈様やヒナコさんに親を殺された子供達に十三段流を教え、妖怪や変異体を倒す力を与えるコインのような金属と自らの血液で枯れ井戸を満たし、『二百年間、子供が二人産まれたら夫婦共に井戸の水を飲むように。井戸と狐石は未来永劫守り抜く事』と言い残し、やがてその傷の回復と共に異界宇宙へと帰って行きました。

 残った四代目師範宗慈様があの井戸の水を飲むと、その身体は光に包まれ、消えてしまいました。その長男新左様は、水を飲めば宗慈様を追えると思い込み、言いつけを破り、まだ十歳だったというのに水を飲んでしまいました。この時は驚異的な回復力を得た程度だったとされています。やがて五代目となった新左様はまたまた言いつけを破り、結婚されたばかりの妻、いと様に水を飲ませてしまいます。虫のような赤子が産まれる事がわかったのはこの時です。

 そうして新左様の弟、悠嗣様が六代目師範を襲名し、三代目眞慈様の言いつけ通り、子供が産まれてから水を飲むと、今度は悠嗣様も光に包まれ消えてしまいました。その魂の欠片を持つ方こそが、そう、これをご覧頂いている貴方様です。

 そうして現在・・・・・・どういうわけか、尻尾ともども封印された筈の眷属達が現れ、私も家内も息子二人も殺され、しかも、身体が復活しないように封印までされてしまっています。十三段家の人間に、水を飲んでから二十年間不死身になる能力が定着したのは三百年前。ヒナコの娘達や眷属はこの能力を知らない筈なのに、まるで知っていたかのように、しかもいとも容易く封印に成功してしまった。

 これはなんとも興味深い謎ですね。その内澪が解決してくれると信じておりますが。


 狐石神社に封印されているのは『尻尾が存在しているという事実』です。既に尻尾は消滅し、あそこにあるのは小さな小石に過ぎません。

 三代目様が仰るには、

『これはカオティック・・・・・・遠い未来、この宇宙でそう呼ばれるようになる概念。誰もがこうなる可能性を秘めている。カオティックが存在している事実が遺されている星ではカオティックは産まれない。我はまずヒナコの身体の一部をこの地に封印し、それを事実とする。残りは宇宙の果てに置いてくる。これで、カオティックが存在しているという事実だけが残る。この事実が解き放たれ、カオティックが発生したという事実と、いないという事実、そしてカオティックを乗り越えていないという事実が重なった時、この地球にはカオティックがいなければならないというシステムが働く。宇宙の最果てからヒナコが戻るのか、その時生きている誰かがカオティックになるのかはわからない。故にこの石は絶対に動かしてはならない』

 という事で、多分何を仰ってるのかわからないと思いますが、ご安心を。私にもピンと来ていません。とにかく、あの石を動かしたら・・・・・・澪の口癖で言うならば・・・・・・ヤバヤバのビェーな事になるのでしょう。


 さあ、ここで十三段家の歴史についてのお話はおしまいです。

 六代目様、本日はお話を聞いて頂きありがとうございました。澪と繋がった六代目様が貴方で良かった。

 それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

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