第11話 知る者と知らざる者
「見せて」
私の隣に歩み寄り、私の背中をさすりながら、文章を読むユリウス。
「どうしよう・・・私のせいで、みんながっ」
新聞の見出しはこうだ。
『イナゴの大群の悪夢再び!?』
記事には私たちの国が大飢饉になっていると書かれていて、王に食料の貯蔵庫のカギを開けるように町長中心に嘆願書を出したり、デモが起きている旨が記載されていた。しかし、間が悪いことに王は体調を崩しており、今は王子が政治を担っているらしいが、王が注意しないことをいいことに豪遊の限りを行っており、いよいよピンチになった王子はようやく重い腰を上げて、妻であるアテネシア王女の国へ支援要請を出したけれど、アテネシア王女は逃げ帰ってしまい、要請も却下されたようだ。
「ねぇ、あなたは知っていたんでしょ?なんで、教えてくれなかったの?」
私はユリウスを揺らす。
私も情報が欲しかった。
もしかしたら、アドルド王子が私に罪を着せていて、私が指名手配者になっているかもしれないとまで思っていた。それぐらい怯えていた私は、興味心よりも恐怖心が上回っていたので新聞には手が付けられず、新聞を読んでいるユリウスの顔を毎日見ながら、悪いことが無かったかどうか見ていたのだ。ユリウスはいつも穏やかな顔をしていたので、なんだかんだ上手くいっていると信じていた。
ユリウスは悪くはないけれど、私はユリウスに対して八つ当たりしたくなっていた。
「大丈夫、全ては上手く行っているよ」
ユリウスは笑った。
いつものように。
だけど、私にはその笑顔に違和感を覚えた。
ドンドンッ
私はその音にびっくりして、玄関の扉の方を見る。
「ユリウス様、お迎えにあがりました!!」
この村の温厚な人たちの訛った声ではなく、ビシッとしっかりした男の人の声は聴きやすく、その喋り方で私たちの国の兵士だと悟った。
(でも・・・何で急に・・・このタイミングで?)
私はユリウスの顔を見た。
ユリウスは観念したような顔をしていた。
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