聖女無双 ―武侠を目指す俺の天職が聖女だった件―

テリードリーム

第1話 プロローグ


 この世界では、十五歳を迎える年に天職を授かる。


 同年代の子供たちが大きな街の教会に集められる"神託の儀"。

 その場で、一人一人に、人類を導く女神から天職が授けられるのだ。


 天職は……女神が我々人類一人一人に下賜される贈り物ギフトだと評されることもある。


 神託の儀において、授かる転職の六割ほどは社会生活で役に立つものだ。"農民"・"商人"・"鍛冶師"などなど。

 そして、残りの四割はというと、"騎士"や"戦士"といった戦いに役立つ天職だ。


 四割も占めているのは……この"マクッソジ"と呼ばれる世界が戦いに溢れているからかもしれない。


 この"マクッソジ"は、俺たち人類の勢力圏である"人類領域"と、魔人が跳梁跋扈する"暗黒領域"に分かたれている。

 その境界線は曖昧模糊としており、人類と魔人の勢力争いによって日々塗り替えられているというのが実態だ。


 人類が優勢になれば"人類領域"が広がるし、魔人が優勢になれば"暗黒領域"が広がる。

 この一進一退の攻防の歴史こそが、人類史なのだ。


 そのような状況にあるわけだから、戦闘系天職を授かると……地域の治安維持を通り越して、戦いの最前線に送りこまれることも珍しくない。


 きっと誰もがこう思うはずだ。

 「命を賭けて戦うなんて絶対に嫌だ」と。


 だが……、俺は、戦闘系天職を授かりたいと思っている。

 そのために俺は必死で鍛錬をしてきた。


 "戦士"や"剣士"などのCコモンの戦闘系天職ではなく……できれば、荒事を極めることのできるSSRダブルスーパーレアの"武侠"を授かりたい。

 いや、授からねばならない。


 武侠になることを。

 ただ只管に願っていた。

 だからこそ、俺は五歳のころから自らに課したハードな鍛錬を乗り越えることができたのだ。



 かつて、俺の住む村を襲った魔物大動乱。

 数千……いや数万とも呼ばれる魔物の奔流スタンピードを撥ね退けて、たった一人で村を救ってくれた武侠ヒーロー


 あのときの俺は、守護まもられるだけの弱者にすぎなかった。

 守護られて全身を恐怖に震わせながら、かたときも目をはなすことのできなかった武侠ヒーローの背中。


 俺は、ずっとその背中を追い続けている。

 もう十年が過ぎたが……、少しでもあの武侠ヒーローに少しでも近づけているのだろうか。





■■あとがき■■

2021.12.01

新作です!

♡や★がもらえると励みになります。よろしくお願いします!






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る