檻の中の小鳥は空を飛べない

梨。

第1話

平日の昼間。

皆が忙しそうに歩いていく交差点で馬鹿馬鹿しいと笑って逆方向へと足を向ける。

そうして得た自由は新鮮だ。

何処までも歩いていく僕はまるで鳥のようで枠に当てはまらない。

僕は今、夜を待つ。

「どうしたんだい?」

彼は尋ねるように僕に聞いてきた。

「違うね、どうしたじゃなくてどうしたいんだ、だろ?」

僕は自然とそう返していた。

「そうか、どうしたじゃないのか」

公園に座っていた彼は遠くの空を見た。

そして、「俺はそんな事考えた事がなかった」と反省する様に語った。

「君は先の事を考えているんだね」

彼にそう言われ、苛立ちを覚えた僕は皮肉っぽくこう言った。

「先が見える奴なんて居ないさ、見えないんだから考えたってしょうが無いんだよ、僕をそんなくだらない奴らと一緒にしないでくれ」

彼は僕が怒っている事に気づいたのだろう。

「すまない、怒っているか?」

そう尋ねてきたのだ。

そんな態度にも苛立ちを覚えた。

「少しは自分で考えろ」

そう言ってそっぽを向いた僕を宥める様に彼は謝罪の言葉を述べる。

自分で考えない奴は嫌いだ。

何処かで自分を庇っている。

傷付くのが怖いと言って閉じこもって居る様なものだ。

そんな奴らと僕は違う。

だから僕は「じゃぁね」

そう言って彼を見捨てた。

ー要らないものは必要がないと誰かが言っていた気がしたから。ー

ーENDー

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