死刑囚のパラドックス

@hoge1e3

第1話 死刑囚のパラドックスとは?

 俺は,どういう事情だか知らないが(設定を考えるのが面倒なので),死刑になろうとしている.


 ある日曜日,看守が,妙なことを言ってきた.


* お前の死刑は,今週の月曜から金曜のいずれかの日の正午に必ず執行される

* お前が,死刑の日がどの曜日になるかは,その日の正午に告げられるまで決して知ることはない


 ところが,こんな俺にも,弁護士がついていて,こう言ってきた

「大丈夫,あなたは死刑にはなりません」


 その弁護士曰く,こういう論理らしい

* まず,死刑の日が金曜日だったら,木曜日の正午で死刑でなかった時点でそのことがわかるはずなので,「死刑の日がどの曜日になるかは,その日の正午に告げられるまで決して知ることはない」に反する.よって金曜日であることはあり得ない.

* ということは,死刑の日は月曜日から木曜日ということになる.

* もし木曜日だったら,水曜日の正午でわかるので,木曜ということもない.

* これを繰り返すと,水曜日もありえない,火曜日もありえない,ということになり,結局月曜日もありえない,ということになる.だからあなたは死刑にならない.


 俺はその弁護士の言葉に狂喜し,一週間をのんびり過ごすことにした.


 そして,水曜日の正午,看守が入ってきた.

「今日は,お前の死刑の日だ」


「え!!! だって,水曜日であることはあり得ないはずですよ!」

「何を言っている.現にお前は,今日が死刑の日だとは知らなかったではないか」


 こう言われて,俺は死刑になった.



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