第43話 決戦・激闘の終焉
カッカカドン!ドン! カッカカドン!ドン!
状況を打開できない歯がゆさもあったのだろう。
帝国軍は再度全軍で突撃してくる。
だが、これもやはりすんでのところでかわして手痛い反撃を浴びせていく。
思うように戦況を進められない
そこからあらゆる手段が次々と繰り出されるのだが、まったく状況に変化はない。
クレイド軍務大臣ならそう考えるだろう。
帝国軍は密集して
ドワンドワ〜ン! ドワンドワ〜ン!
帝国軍が動かないと見て、カイはその後方へまわり込んでの
背後から飛び出てきたわが軍に驚いた帝国軍は、
ナラージャ筆頭中隊を先頭に、クレイド軍務大臣がいる本営に届かんとばかりの勢いでなだれ込んでいく。
クレイドが兵を反転させて
明らかに包囲を
もしクレイド軍務大臣に失策があったとすれば、防御に徹する
ナラージャは先頭を切ってなだれ込んでいたが、包囲せんとする異変に
帝国軍はその動きに釣られるように、一気に
これも“軍師”カイの想定どおりである。
のみならず、横列を組んで一対一の決闘を仕掛けた。
その精強な戦いぶりを見て、帝国軍はじわりじわりと距離をとっていく。
そのさまを見たナラージャ中隊は、すでに
じきに
再度軍を左右に分けて、帝国軍の左右から同時に
見えないものが見え、さらに
王国軍の全員が見えない帝国軍を見えていたわけではない。
軍師カイと軍務長官の私、それと筆頭中隊長のナラージャ。この三名だけが帝国軍の位置を正確に
実は、見えない帝国軍は王国軍が消えたのち、移動していないのだ。
わが軍が見えなくなったら、その場で
だから王国軍の動きを正確に
ただ、その事実に気づいている者だけが、誰よりも
戦闘開始からどのくらい時間が
戦場の
その場で立っている兵力差はすでに無きに等しい。
二万九千の軍勢が一万近くにまで打ち減らされていたのである。
とくに左右の騎馬中隊と軽装歩兵大隊は
残された重装歩兵大隊も、背後からの
たった数刻の出来事のはずだ。
それなのに帝国軍だけが一方的に二万の兵を
兵数が減れば命令伝達がしやすくなり、王国軍と互角の状態に持っていけたかもしれない。
だが兵数が減っても五段の命令系統に変わりはなく、王国軍より連動が鈍い弱点は残ったままなのだ。
クレイド軍務大臣は
兵の勢いにも差が見てとれた。
わが王国軍は圧倒的な優勢により
対して帝国軍は左右両翼の騎馬中隊・軽装歩兵大隊の
もはや戦闘力の差は歴然だ。
「帝国軍、全軍退却だ!」
と戦場全体に響きわたるほどクレイド軍務大臣は力強く告げた。
あまりの声の大きさに両軍の兵士たちがいっとき戦いの手を止めたほどである。
戦場が静まりかえったのを見てクレイドは再度全軍に退却を告げ、
われわれはとうとうあの
仮にこれ以上戦いが長引いても、無用の死者ばかり増えるか帝国軍は
それほど用兵に差が生じているのである。
わが軍に“軍師”カイがいるかぎり、用兵でクレイド軍務大臣に勝ち目はない。
それを思い知った帝国軍は整然と戦場を退き、重装歩兵を
それを見たわが軍も後退して軍の再編を急ぐ。
ともあれ、テルミナ平原下流域の戦いは幕を下ろしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます