第4話 南欧の薔薇とアンジュ―伯ことイングランド王(再調整・更新)

「私は貴方の妻になるの」フランスの王妃アリエノールは

家臣の一人、11歳年下のアンジュ―伯にそう言ったのだった。


まだ若いアンジュ―伯は自身の野心と富を持った年上で極上の

美貌の王妃を手に入れる事に そっと笑う


1337年に始まった百年戦争前、1445年の薔薇戦争前である 


遡る事 1157年頃のフランスの王宮での出来事

南欧の美しき薔薇の姫  欧州の王達の祖となった姫君


当時のフランス王よりも多くの富と広大な領土、フランスの地の半分以上を

所有していたアキテーヌ女公で 嫁したのはフランス国王  

フランス王妃 ルイ7世の妻 それがエレオノール・アキテーヌ王妃だった。


彼女が見つめるのは フランス王の家臣の一人 10歳以上年下のアンジュ―伯


「ええ、そうなの 私は貴方の妻になるわ」


アリエノール王妃 金の髪が木漏れ日に輝いている

未来の獅子心王の母となる定めの姫、誰より勝気そうな瞳は

希望と・・それに野望に満ち溢れていた。


「だって あの御方、私の夫は良い方ですけどね

修道院育ちの僧侶みたいな方で・・」

暗い笑みを浮かべて 麗しきエレオノール王妃は言葉を続ける


「それにパレスチナの地 十字軍国家アンテイオキア公国で

私の大事な叔父レーモン叔父上様を助ける事が出来なかった・・

ルイ7世、私の夫が邪魔して助けられなかった」

唇を噛み締めるエレオノール王妃


「私の大事なレーモン叔父上さま 困っていた私達を助けてくれたのに 

あの恩知らず」目元に悔し涙が浮かぶ


「所詮、豊かな南欧の富が目当ての愚か者達 フランスの宮廷の者達

父は亡くなり その彼等に従う私、哀しい女の身・・

大事な故郷の領民が心配だわ」


「交易品の珍しい産物に

頂きました南欧のワインに貴重な蜂蜜・・南欧の富の一環ですね」

「まあ、喜んで頂いて光栄だわ アンジュ―伯」

完璧な肢体、金刺繍が施された豪華なドレスを着こなした美の女神のような

麗しい王妃が微笑む。


「私の二人の娘は夫が可愛がっているから・・そうね、仕方ないわ」


「麗しき南欧の姫君 私は貴方の望むままに・・」

抱きしめられて くちずけを交わす 

野心と若さに満ち溢れたフランスのアンジュ―伯 


情の深い、そして猛々しい二人の血みどろの愛の始まりだった。


彼は血縁の繋がりと

イングランド王継承の争いに打ち勝つ事によって


イングランド王国、英国の王ヘンリー2世となり、プラジネット王朝を打ち立てる

アリエノール王妃との間に娘5人と息子5人が生まれ、その一人が十字軍の英雄

リチャード獅子心王、もう一人がジョン失王である


イングランド(英国)の王妃

妻となったアリエノール・アキテーヌの領地、フランス領土の

半分以上を所有

(※ジョン失地王の時代にはフランスの領土は多く失う) 

やがて、幾度か繰り返すフランス王家との婚姻による血の交わり


百年戦争の遠因でもある

彼等の子孫たちが骨肉の争いを繰り返すのが薔薇戦争となるのだった。



木の陰から窓辺を覗く吟遊詩人の姿がある

「・・・・・・・・」苦虫を噛んだ顔をする綺麗な少年の吟遊詩人 魔物のシオン

「南欧の宮廷にパレスチナでも」

 

「僕、見かけと違いタフな姫さまに違う、あの人にこき使われたけど 

また、こき使われそう ふう」


「大らかな優しい人でもあるけど、情熱家だから」


吟遊詩人の魔物 編んだ長い黒髪が揺れて、口元には牙が見えた。






※アリエノール王妃とルイ7世が参加したのは 第二次十字軍となります

聖地巡礼の目的もありました

後に息子のリチャード獅子心王を支え、彼の不在中は国政に携わり彼リチャード王が囚われて人質とされた時に身代金の用意、救出に奔走した強き母親


また、彼リチャード獅子心王の盟友であったフランス王フィリップ王

(ルイ7世と三番目の妻の子 名君となったオーギュスト尊厳王)


カステイリア王家(今のスペイン)に嫁いだ娘の子供の一人を

遠いピレーネ山脈を越えて フランス王、フリップ王の王子

王子ルイ7世の妻にするために連れ帰りました。※ミスがありましたので修正しました



2022・1・7~






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