第23話 心臓を捧げよ★
本当に秘密の抜け道があった。
私達はその中へと入っていく。
誰かにバレてはいけない。心臓の動きがはやくなっていく。
「抜け道が一つとは思えなかった。もしここが抜け道なら、あの時の秘密が暴けるかもしれない」
小さく囁く声。
迷い込んでルシファーに気絶された時のことが思い出される。
「この学園には秘密の抜け道が沢山あると思うんだ」
「どうして?」
真っ暗闇の中、感覚を頼りに一段ずつ階段を降りていく。
「天使の学園は難攻不落の巨大な門に囲まれている。飛んだって張られたステルスバリアが邪魔をする。ここに侵入することなんて不可能に近い」
そうだ。ここは周りが壁に囲まれた僻地。
「どうしてだろう」と疑問に思った。
「それも全て悪魔の侵入を防ぐためだ。だけど、もしそれらも突破されて悪魔の侵入を許してしまうかもしれない。侵入口と入り口を抑えられたら俺らは一網打尽になる。すぐにこの場所は落とされ拠点とされる」
コツコツと足音が闇に響き闇に呑まれ闇に消える。
「そんな愚鈍な施設な訳がない。誰にも分からないよう作られた緊急通路があれば話は別。そこから逃げ出せばいい。悪魔に知られないよう抜け道の存在は極秘にすればいい。ルシファーはこのことを秘密にするために俺らを気絶させた。その仮定が現実味を帯びていく」
つまり、悪魔対策で造られた防壁は破られたら脆くこの学校が容易く乗っ取られる可能性が高い。その対策として緊急通路があって、その通路は秘密にされている。ということだろうか。
淡い色が近づいていく。闇が薄くなっていく。
近くで彼が呟いていた。
小さく、そして疑い深い声。
「緊急通路での出来事。黒い羽を持ったルシファー。俺はルシファーに対して疑り深くなっていく。知らないことが多すぎる。それだけ興味がそそられるってことだけどな」
もしかすると彼はルシファーについて知るために黒い羽について調べていたんだろう。
私もルシファーに対する真実が気になっていく。
階段から降りた。
淡い黄ばみがかった薄い光が地下を照らす。
「少し明るくて歩きやすくなりましたね」
「そうだな。歩きやすいな……。ちょっと待て。誰かがいるかもしれない」
どういうことだろうか。
「そうだよ。誰かいるんだよ──ね」
背筋が凍る。
侵入したことが誰かにバレたんだ。
「明かりがついていること自体おかしいと思わなかった」
背後から声がする。
女性の声だ。
私達はゆっくりと振り返った。
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