第21話 夢花火☆

 その日の終わりが近づいた。

 その日に学んだことはその日のうちに復習する。俺は必死に縋り付く。

 俺らは寝る準備をして寝床へと向かった。

 変に長く起きるのもナルミに申し訳ない。彼女は執事と俺の付き人との間で挟まれて疲れがあるように見える。早く寝ればその分彼女の自由時間が増える。

 俺は夢の中へと入っていった。

 そこは俺の夢ではないような、別世界に飛ばされたかのような夢だった。いえ、どこか感触があるようにも思える。

 そこはリアリティとバーチャリティの中に挟まれた謎の場所のよう。


 そこは天使の園の中。赤い液体が至る所に落ちている。鮮やかな赤と濁った赤が忌々しい。

 白い羽が赤く濁っている天使は死体となって地面に転がる。その天使が空に引っ張られていく。すぐに羽の力だと気づいた。

 そう、羽で動かされていた。

 けど、その羽は白色ではなくて黒色だった。

 その死体はどこかへと引き込まれるかのように進む。

 そしてまた、新たなる死体が増え、さらにまた増えて、を繰り返す。残酷な瞬間が一枚一枚頭の中にこびり付いていく。

 それはまるで地獄絵図。

 言うなれば、ゲームオーバー。


 目が覚めた。

 最悪の目覚めだ。

「胸糞悪ぃ。何なんだ。この夢は……」

 その悪夢は何故か夢とは言いきれない不思議な魔力を持っていた。

 黒い羽なんて初めてみた。それは俺の経験したことない知識にもない、考えそうにもない新情報満載の夢だった。


 朝ごはんが用意された。

 ナルミが心配そうに言葉をかけた。俺は素直に答えることとした。

「悪夢を見て、調子が悪いんだ。大量に天使が殺戮されて黒い羽で飛ばされる夢だった。なんか後味が悪くて胸糞悪かったんだ」

 食卓に用意される朝ごはん。相変わらず彼女の食事は質素で、俺の食事は比べると豪華だ。

「黒い羽……。それは天使のと違うのですか?」

「黒い羽になんかあるのか? 俺はこの夢で初めてみた」

「私も夢を見て……。その時に恐ろしい七体の悪魔っぽいのを見ました。ほとんど全てボヤけてたけど。けど、その内一人だけははっきりと見えました。まあ夢ですけど」

 悪魔。それは天使に仇なす存在。今は天使や人間と住まう場所を区切り、さらに万全の体制で侵入を防いでいる。ここ天使の場所に踏み入ることなど不可能に近いだろう。

「その一人がルシファーで何故か白い羽じゃなくて黒い羽でした」

 もしかしたら、前のルシファーに気絶された時のことが巡り巡った夢だったのだろうと思う。

 けど、「黒い羽」というのがどうも引っかかる。

 俺はその羽について調べようと思った。

 今日は館内を知るついでに図書館へと行こう。

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