第9話 月と花束★

「さて皆さん。次の企画を行う」

 視線がルシファーの元へと集まった。

「これから’肝試し’を行う。ルールは簡単だ。二人一緒に道を進み、道中に置かれている石を全て集めて目的地に行けば完遂だ。石は合計七つある。相棒ペアとの絆作りの場として、探索の機会として、十分に楽しんでくれ。建物を出た所で、来たものから順に行う。一時的に解散するが、各自、必ず集まれ。以上」

 その場は一旦お開きとなった。動きやすい服装に着替えるためだ。

 もう一回は着替えているからまた着替えるのは面倒臭い。そもそもドレスと違い動きやすさがあるからわざわざ着替える必要もなかった。


 直接外へと向かう。

 直接向かったメンバーで参加順が決まった。

 一番最初に肝試しに参加するのはヨネヅとゼンジペア。続いてホシノとリンクウペア。三番目は何故かドレス姿のモリカとヘキナペア。四番目は私達のペア。その次に、ノナミとハルペアとなった。他のペアは部屋に寄ってから来るのだろう。まだここには来ていない。

「アサヒ。ナルミ。お互いゴールを目指そう。そして、ナルミ──」そこまで言うと耳元で、アサヒのことを頼んだよ、と呟いた。

 そうして、去り際に小さくウインクをして去っていった。

 私に何ができると言うのか。私は無意識的に首を振っていた。


 最初のペアが出発した。

 時間を置いてホシノ達のペアが向かう。

 ギリッ。どこからか睨むような視線を感じた。殺気は感じるが、夜のせいで誰から放たれた視線かは分からなかった。

 続くペアが出発した。

 次は私達のペアだ。

 夜中の園。初めての探索であり、肝試しであり、普通だったらワクワクしそうだが、今はそんな気分にはなれなかった。横をチラリと見る。やはり、楽しめなさそうだ。

「さあ、次はアサヒとナルミだ。こちらへ来てくれ」

 アサヒに渡される金色の石。

「それは金色に輝く「金の石」だ。他の石が残り六つ置かれている。どこに置いてあるかは地図に書いてある。さあ、進むといい」

 ルシファーから貰った石をポケットに入れていた。

 私達は夜の園を二人で歩いていく。

 本当なら怖がってパートナーに全て委ねるのだろうが、今の私は委ねる気持ちはない。お化けは少し怖いが、怖さを我慢してやる過ごそうと瞳に気合いを灯す。

 道の書かれた地図。まずは一本道だ。

 無言で歩く道。

 どこか無味な道中。

 つまらないな。何事も感じない。感じさせてくれない。

 手入れされた草木。歩道された道。決められた道を進んでいくと花壇についた。闇に映える青い花がとても美しい。

 花壇の中央には一人の天使が待っていた。

 青い背景に黄土色の髪と大柄の巨体が合わさる。

「おめでとう。これは二つ目の石は黄色に光る「月の石」だ。続くは幾つもの道に別れてるからよく相談して進めよな。じゃあ、残りの道、頑張れよっ。よっ」

 ちょいと大きな声が印象的だった。

 そんな彼を後にして先を急ぐ。

 地図には三つの道が書かれている。どの道を行こうか。

 私は無言で横を見た。

 彼もまた冷たく見返していた。

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