第2話 宿命☆

 待ちに待った新たなステージ。

 天使の子どもはまず初頭学校とも呼ばれる天使の学校に通い様々な事を学ぶ。社会のルールやマナーから仕組み、文学から数学や化学、天使として必要な知識。俺はどれも優秀な成績を収めた。

 そこを卒業すると次は中等学校と呼ばれる天使の学園へと進学する。そこは半人前の天使を一人前にさせる場所である。一人前と見なされなければ卒業はできない。逆に、一人前と見なされたら年齢関係なく卒業できる。

 そう、完璧であれば早く大人になれる。

 気だるさとは全く違う重さが体にのしかかる。


 初頭学校を卒業した四人。その中の代表は俺だった。

 代表生徒として他三人の前に立ち、案内役のルシファーという男についていく。後ろからは賑やかな音がするが、隙を見せられない俺は後ろを振り向くことはしなかった。

 柔らかい草木の底から茶色い土が飛び跳ねる。

 目の前に広がる巨大な壁。大きな羽で羽ばたいてもその壁を越すことは難しいだろう。

 巨大な壁の中にある檻が開く。

 ゆっくりと開く鉄の門。

 その中に入るが、どこか刑務所のような厳重さに首を捻りかける。捻らなかったのは頭の中に蔓延する「完璧」の二文字のお陰だ。


 門の先に待っているのは──

 白い髪が揺れている。スラッとした姿と完璧なる姿。まさに俺の目指すべき姿。天使界一のイケメンと呼ばれている男の向こう側には大きな館が聳えたっていた。

 大きな館だけではない。

 周りには広大な緑が広がっていた。

 不可抗力で目が輝いていく。

「今日からは寮生活だよ。学園の外の家族や友達とは連絡が取れないから注意してね」

 目の前で美しい白羽が一枚落ちた。

「そして、寮生活は人間の付き人との共同生活になるよ。トラブルを起こさないよう仲良く暮らしてくれよ」

 彼に連れられて建物の中へと入っていく。

 白い羽が美しく見えるぐらいピカピカな内部。能力で作られた絡繰人形が掃除をしている。


「アサヒ君はこの部屋だね。付き人の役職は「執事」だ。三時間後に来る予定だね。来たら挨拶や今後の生活ルールなどを決めるといいよ。夜の九時頃に講堂へ。場所は地図を見れば分かるだろう。もし迷ったら近くの絡繰人形に尋ねれば教えてくれるから迷わず尋ねるといいよ」


 今日から寮生活だ。

 俺の住む部屋へと入った。

 少し広めの玄関を通る。通路にはクローゼットや風呂場、御手洗場などがあり、そこを抜けると寮にしては大きめな無垢な部屋がある。ソファやテレビ、エアコンなどが完備。その部屋からさらに二つの部屋へと行ける。どちらとも個室部屋だった。どちらともベッドとタンス、クローゼットが置いてある。部屋一つは何しても自由。そんなオーラがひしひしと伝わってくる。

 共同部屋のソファに座る。

 誰もいないこの場所は居心地がいい。そこには重みなどかからないから。


 コンコン、ガチャ──


 失礼します、と薄く声が聞こえた。「今日から執事としてお世話になる、ナルミです。よろしくお願いします」

 そこにいたのは人間の女の子だった。

 「執事」だと聞いていたため、見ず知らずの内に男が来ると思っていた。いや、常識的に考えて男と女が同じ部屋で暮らすなんて思いもしなかった。

 一つの共同部屋の中で天使の男と人間の女が暮らす。その状況に思わず「はぁ?」と漏らしてしまった。


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