第2話 天才鍛冶師は追放される


「マキナ、お前はこのギルドには必要ねぇ、クビだ」


 翌日、マキナはジュダルに呼び出され、入るや否や彼に言われた。


「……どういうことだ?」


「武器を弄るだけの奴を『白銀の翼』のメンバーとは認めねぇって言ってんだよ」


 ジュダルは心底面白くないと言った表情を向けた。


「そうだ! 口を開けば武器を雑に扱うなとか生意気言いやがって!!」


「前々から気に入らなかったんだよ!」


 周りには残りの団員がマキナを囲みながら不満を漏らした。全員の総意らしい。


 今までずっと武器を大事にして欲しいと説得し続けてきた、武器には耐久力が数値化されていて、それが無くなると壊れてしまうことも何度も伝えた。


 しかし、それは鍛冶スキルを持つマキナにしか見えない。故に信じてもらえなかった。


「つーわけだ、お前は『白銀の翼』の不純物なんだよ」


「今まで俺の作った武器を使ってたからこそここまでやってこれたはずだ、勝手が過ぎるぞ」


「自惚れんな、今までのクエスト成功は全て俺達の実力だ、テメェじゃねぇ! ……それにな、お前を雇う金よりも武器屋で揃えた方が安上がりってことに気付いちまったんだよ」


 ジュダルは下品な笑いを浮かべる。


「今まで武器屋に行くことが無かったからな! よかったぜ、たまたま酒場の帰りに寄ってみたらお前が金食い虫ってことが分かったんだからな!!」


「そうだそうだ!」 


「この給料泥棒が!!」


 マキナはメンバーから非難の声をそこかしこから浴びせられた。


 納得がいかなかった。

 確かに揃えるだけなら給料よりも安く済む、

 だがマキナの作った武器は威力も耐久力も最大に上げた代物だ、既製品の物とは訳が違う。


 そんな彼の武器ですら2日と持つか怪しいんだ。

 彼らの使い方ならば市販の物だと恐らく1日も、いや一振りも持たない、今まで通りにクエストをこなす事は難しいだろう。


 結果的に高く付くのは目に見えている。


「……本当にいいのか?」


「あ?」


「俺がいなくなると『白銀の翼』は崩壊する、間違いなく」


 途端、あれだけ浴びせられた罵詈雑言が止み、静まりかえった。


「……ぷふ!」


 ジュダルの頬が緩み、息が漏れた。


「「「ダーハッハッハッハッハー!!!!」」」


 団員たちもジュダルの笑いが伝染したかのように笑い出した。


「お前マジで言ってんのかそれ!」


「冗談もそこまでいくと面白いもんだな!」


 一向に蔑む笑いは止まらなかった。

 彼らには何を言っても無駄だ、ここへ来てからの扱いを考えれば容易に分かる。


 マキナはこの宣告を聞き入れる事にした。


「わかった、俺は忠告したぞ」


「じゃあなマキナ、せいぜい野垂れ死なねぇようにな」


「うわ〜、ジュダルさんひで〜!」


「いやその通りだっての!」


 笑い声を背中に浴びながら、マキナはギルドを後にした。

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