第三部B面 空の繋がった日6

 竹流の降る指がカウントを刻む。

 ……3……2……1……

 ボクはマイクに向かってゆっくりと言葉を紡ぎ出した。


『ボクの声が聞こえますか?』

『えっと……わ、私の声届いてますか?』

『菜穂ってば緊張しすぎだよ。リラックスリラックス』

『ごめんなさい。なにぶんこういうのは初めてなもので……』

『そっか~、もともと裏方だったもんね。つまりボクは菜穂の“初めての相手”ってことに……って痛っ! ちょっと竹流、丸めたプリントで叩かないでよ』

『生放送はSEで誤魔化したりできないんだから下ネタは厳禁ですよ……』

『ぶー、まぁいいか。柄沢ヒカルと!』

『わっ、な、七瀬菜穂の!』

『『 GOO♪ラジオらす! 』』


 竹流が苦笑いを浮かべながらいつものオープニングBGMを掛けた。

 観客席の方からヤンヤヤンヤと歓声が飛んでくる。


『みなさんこんにちは……っていうか時間的にはこんばんはだね。柄沢ヒカルです』

『お、同じくみなさんこんばんは。そして初めまして。七瀬菜穂です』

『いや~始まっちゃったねぇ公開生放送。初めてマイクで喋ってる気分はどう?』

『はい。あの……とても緊張……するであります』

『口調まで変わっちゃって初々しいねぇ。あ、いままでアシスタントをしてくれてた明日香は産休のため……うわっ、すっごいこっち睨んでる。あ、明日香ってば冗談だよ。とにかくそんな明日香に代わって今回からは菜穂がアシスタントになります』

『今回からはって……今回しか引き受けたつもりはないんだけど……』

『ダイジョブジョブ、やりはじめたら癖になるから』

『なんですか、その中毒性!』

『この通りツッコミもできる有能な子です。みなさんどうぞよろしく♪』

『ツッコミと有能さになんの関係があるんですか!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る