第2話 川への想い

権助さん

何か話してください

これは私からのお願いです

ここにいる時だけでかまいません


わかりました

でも、何を話せばいいかわかりません


そうですか

それでは

権助さんはどのような女の人が好きです


それは

言うことができません


なぜですか


それが答えです


それでは

今から近くに見える川に行きましょう


川はここから遠いのですが

どうしてわかるのですか


それは言えません


今度はかぐや姫さまがそう言われるのですね


そうですね

ふふふ


かぐや姫さまの笑った顔を初めてみました

とても


とてもとはどういう意味です


それは言えません


そうですか

それでは今から川に行きましょう


それはいけません


大丈夫です

お父様にはわからないようにします

権助さん

目をつぶってください


はい

わかりました


私が三つ数えるまでは目を閉じていてください


はい


もういいですよ


なんと、ここは川ではないですか

いつの間に


気にされなくても良いです


かぐや姫さま

川の水は冷たいです


そうですか

それでは入ってみましょう


駄目です

着物が濡れてしまいます


大丈夫です


権助さんも入ってみたらどうですか

わあ、冷たい

権助さんも入ってください


わかりました


冷たくて気持ちがいいです

私は初めて屋敷から出ました


そうですか

かぐや姫さま

その冷たい水で顔を濡らしてみてください


わかりました

なんと気持ちがいいのでしょう


それは良かった


一度でいいから

川で泳いでみたかったです


それは駄目です

着物が濡れます


大丈夫です

ほら

泳ぎました

冷たくて気持ちが良いです

権助さんも

泳いで下さい


着ているものが


大丈夫です

いいから

泳いでください

一緒に泳ぎましょう


わかりました


どうですか


気持ちがいいですね

かぐや姫さま


あそこの岩まで

私と権助さんがどちらが早く泳いで

着くことができるかやってみましょう


かぐや姫さまは

泳いだことがあるのですか


いえ

ありません


それでは

私が早くつくではないですか


いいから

やってみましょう


わかりました


それでは

行きましょう


はい


かぐや姫さま

大丈夫ですか

上手く泳いでいませんよ


そうですね

初めてですから


それでは私がここで待ちましょう


ふふふ

権助さん


どうして

もう

岩についているのですか


教えません


それはずるいです


ふふふ

こんなに楽しいのは初めてです


それでは

この上の橋の上から

川を眺めてみましょう


わかりました


きれいですね

川は


きれいなのは

かぐや姫さまです


権助さん

お願いがあります


何でしょうか


私を権助さんの両腕で包み込んでください

川の水が冷たいのです


それはいけません


駄目なのですか


はい


それでは

ここから川に飛び込みます


それは駄目です


それなら

私のお願いを聞いてください


私がそのようなことをしてもよいのですか


お願いします


これでよいでしょうか


もっと強く手を回してください


こうですか


そうですか

かぐや姫さま

このようなところを人に見られたら

もう、かぐや姫さまと

お会いすることはできません


それは心配ありません

誰にも見られません

それより、しばらくこうしてください


わかりました


権助さま


いえ、私は権助と呼んでください


いえ、もう

権助さまなのです

私の心の中には赤い花と権助さましか

見えません


かぐや姫さま


権助さま




そろそろ

ご主人様が待っています


わかりました

目を閉じてください

三つ数えますから

それまで目を閉じてください


はい


もういいですよ


なんと

ここはお屋敷ではないですか

着ているものも乾いております


どうしてですか


それは言えません


かぐや姫さま

どうして

そのような悲しい顔をするのですか


いえ

気にしないでください


わかりました




権助さま


かぐや姫さま

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