一方そのころ、森の中の少年は。




「……ふう、やっと直ったぜ」


 暗闇の森の中から、少年の声が聞こえてきた。


「まさかこんなところで愛車がパンクするなんて……今日はちょっとついてねえなあ」

 少年は一仕事を終えたように大きく伸びをすると、何かにもたれ掛かった。体制的に、バイクだろうか。

「もう暗くなっちまったし、野宿していくか。まだ依頼の日程には余裕があるからな」




 バイクの荷台から何かをあさっている音がしているときだった。


 森のどこからか、オオカミのうなり声が聞こえてきた。


「……こりゃあ、野宿はだめかもしんねえ」


 少年は慌ててバイクにまたがると、エンジンをかけた。




 森の中を滑走していくバイクを、オオカミの群れが追いかけてくる。


 オオカミの1頭が、バイクに向かって大きく飛び掛かった。




 月夜に照らされた緑色のオオカミは、体を真っ二つに分けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る