天井が迫ってくる塔 第7話
「えっと・・・ジュース・・・かな?」
少し考えたのち私は適当に答えた。
正直なぞなぞってのは斜め上の発想が必要な物なのだ。
なので深く考えるよりも意外と単純な答えが正解だったりするもの、それに金剛が出しているので命がけではないのだから・・・
そう言った私の答えを嬉しそうに聞いた金剛、にこやかな顔のまま両手の人差し指を小さくクロスして告げる。
「残念じゃが違う、これは字に書いてみればすぐに分かるんじゃがな」
そう言われ私はスマホをポケットから出して入力する。
筆記用具が無くてもこうやって文字を目で見る形で表示できるのだから本当に便利だ。
私が入力しているその様子を物珍しそうに見つめる金剛、そして表示画面を金剛の方へ向けてみた。
それなりに距離があったので見えるか心配だったが、どうやら視力は悪く無い様だ。
「をををっ未来の道具ってのは本当凄いんじゃな!」
「それで、これがどういう事なの?」
少し親し気に、彼の優しさを感じながらそう尋ねた。
実際に入力してみた文字を見てもいまいちピンとこないのだ。
すると彼は人差し指を横にスッと動かし告げる。
「横に伸ばす棒を取った時に単語になるのが仲間じゃよ」
「横に伸ばす棒? ・・・へぇ~」
そう言われスマホの『ー』を削除すると直ぐに答えが分かった。
それと共に冷や汗が頬を伝う、私が自分に出された問題が解けたのが偶然だと証明されたからだ。
そして、リーゼントを微調整している金剛が見た目に反して頭が回るのに感心し笑顔を向ける。
そうしているとやがて天井が通過した。
金剛のお陰で焼け死んだ人を見る事無く上の階まで行けたのだ。
「さーて、次が最後みたいじゃな」
「えっ?」
私の目には周囲に生き残った数名と毎回置いてあるペットボトルが置かれた長テーブルと神棚しか目に入ってなかったが、金剛は背を反らしながら見上げていた。
それに合わせて私も上を見ると・・・
「あっ・・・」
そう、今までと違い天井が中央に向かって高くなっていたのだ。
つまりここが塔の天辺で、次の問題を解いて上に抜けれれば外に出れるという事になる。
ここが一体どこなのか?なぜ私達はここに居るのか?
分からない事ばかりだが、終わりが見えたという事は安心につながった。
「つぎ・・・問題に答えられれば・・・」
「あぁ、その意気じゃ!」
そう私を励ます金剛、正直気付けば彼に特別な感情を抱き始めている自分に気付いていた。
もしもここから二人で生き残れたら・・・
そう考えた私の耳に突然それは聞こえた。
「うっがはっ・・・」
「うぇぇ・・・げぇぇ・・・」
「あぎぁ・・・あげぇぇ・・・」
苦しそうな絶叫、それに慌てて金剛と一緒に視線をやると数名が苦しそうに喉を押さえて悶えていたのだ。
その様子で私と同じことを考えたのか、金剛が口にした。
「毒か?!」
そう言われ金剛と同じように私も袖で口元を押さえる。
それがどれ程効果を発揮するか分からないが、少なくとも吸い込む量は減るだろう・・・
私達の視界に薄っすらと白い霧が見えていたのだから・・・
だがしかし、私達は特にこれと言った苦しさを感じる事は無かった。
そして、それは私達だけではなく・・・
「一体どういう事なんだ?」
「やだ、怖い・・・もう、嫌・・・」
柊が東の背中に手をやりながらこちらへ歩いてきた。
その二人もこれと言った苦しさを感じている様子が無く、一応袖で口元を押さえてはいるが問題が無さそうであった。
という事は・・・
「そうか!このペットボトルの水か!」
金剛が慌てた様子で長テーブルの上に置いてあるペットボトルを2本手に取り駆けていく。
本当にこれのお陰かは未確定だが、あの苦しんでいる様子に、いてもたっても居られなかったのだろう。
そんな金剛の行動力にますます彼の事が気になるのだが、今はそれどころではない。
「二人とも協力して!」
「う、うん・・・」
「あぁ・・・」
半信半疑ではあるが二人もそれぞれ別の人の所へペットボトルを持って、各自バラバラに行動するのであった・・・
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