天井が迫ってくる塔 第2話
「は、離せ!」
金剛と名乗った不良が口にした言葉に合わせてか、渡辺と名乗った男子はその手を離した。
痛む腕を摩りながら睨みつける金剛、だがその顔色が一気に青くなる。
「どうした?掛かって来ないのか?」
渡辺が中腰に構えた姿勢で佇んでいた。
その気迫、見ているだけで背筋が凍るような恐怖を離れた場所から見ているだけで感じ取れた。
殺気というやつなのだろうか?
「や、やらねぇよ!」
強がって口を開く金剛だが、渡辺と名乗った男子に恐怖しているのか視線を反らした。
だが、次の瞬間金剛は地面に捻じ伏せられる。
それを見た誰かの悲鳴が響くが誰一人その場から動こうとは思わなかった・・・
「な・・・なにをす・・・」
「君を更生させると言った筈だが?」
どう見ても一方的に仕掛けているのは渡辺である。
だが、そんな二人のやり取りを見守る中・・・一人の女学生が声を上げた。
「こ、ここ圏外になってるよ!」
その言葉に私もポケットのスマホを取り出して確認した。
確かに県外、しかもGPSも起動していなかった・・・
「本当だ・・・」
そう呟いた私の方を渡辺と金剛が目を見開いて口を開く・・・
まるで不思議な物を見るかの様な表情、そしてその視線は二人だけでは無かった。
「ねぇ・・・なに、それ?」
「えっ?」
その声の方に目を向けると小柄な女子が一人、その手にはガラケーが在った。
どうやらさっき圏外と言ったのは彼女の様である。
随分古そうな携帯電話だと視線をやるが、今でもガラケーを使っている人も居るのは分かっていたのでそこまで違和感は私には無かった。
だが・・・
「お前、その光ってる薄い板は・・・なんだ?」
今度は別の男子からの声・・・
一体自分が何を言われているのか分からないが、とりあえず指差されているスマホを彼に見せて告げる。
「えっと・・・私のスマホ・・・だけど?」
「す・・・まほ?ってうわっ?!」
その時であった。
突然地面が揺れた!
いや、正確には地面だけでは無かった。
「きゃっ?!」
「えっ?なにっ?」
「うぉっ!?」
「おおっと」
誰もが驚き、姿勢を低くしてしゃがみ転ばないようにした時であった。
レンガで出来た壁が振動でヒビが入り空からパラパラと砂の様な物が降ってきたのだ。
それに気付いた皆が上を見上げ・・・
「て・・・天井が!」
振動が続く中、私も上を見上げて気付いた。
天井が徐々にだが迫ってきているのだ。
振動は止む事無く、長テーブルの上に置かれていた蝋燭や神棚が床に落ちて壊れ誰かの悲鳴が聞こえた。
「おちつけ!」
「お前ら少し静かにしろ!」
それは同時に響いた。
金剛と渡辺が大きな声で叫んだのだ。
二人は一瞬お互いを見合わせ、争っている場合では無いと判断したのか互いに直ぐ視線を反らし・・・
「落ち着くんだ皆!まずは慌てずに現状を確認しよう!」
「ちっ」
渡辺の言葉に同意したのか金剛も舌打ちをしつつ周囲に目配りを始めた。
私もあの渡辺と名乗った男子の言葉に習い、辺りを見回すとそれに気付いた。
「なに・・・これ?」
それは床に書かれていた『〇』であった。
丁度人が一人は入れるくらいの大きさの〇、何か分からないが吸い寄せられるように私はその〇中に足を踏み入れた。
「えっ?!」
すると突然床から光が出て上に向かって伸びていく。
私はその光の中で声を聴いた・・・
『問題! 歌手、画家、小説家。3人の中で秘密が無いのは誰でしょう?』
それはなぞなぞであった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます