悪役令嬢戦記:死ぬしかない悪役令嬢に転生したので、無双を目指す事にしました。
克全
第1話:プロローグ
目の間に強大な竜が立ちはだかっています。
この世界最強の存在と言われている古代竜です。
普通なら絶対に勝てない相手です。
勇者や英雄と呼ばれる戦士であろうと、聖者や聖女と呼ばれる聖なる者でも、単独では絶対の勝てない圧倒的な強者です。
普通ならば。
ですが私は別です。
ここは親友と私が心血を注いで創り上げたゲームの世界です。
二人で創ったモノなら、立っているだけのNPCの設定も知っているのです。
そう、二人で創り上げた登場人物と設定なら。
しかし、今のこの世界には、私の知らない設定や登場人物もいるのです。
欲に塗れた連中に騙されて、株式上場したのが愚かでした。
会社は乗っ取られてしまい、ゲームの権利も奪われてしまいました。
全ての登場人物が幸せになれる、遊ぶ人全員が幸せになれるようなゲームにするはずだったのに、ありきたりの悪役令嬢ゲームになってしまいました。
男性視点の欲望で色々な要素を詰め込んだクソゲーを創り出してしまいました。
親友と私が心血注いで創り上げた設定の上に、金儲けのための設定が上書きされてしまい、中途半端なゲームになってしまいました。
いえ、バグ塗れの上に課金で何でもできてしまう、失敗作になってしまいました。
ですが、そんなゲームだからこそ、今の私は無敵なのです。
死んでしまったのか、夢の世界なのかは分かりません。
ですが今私がそんなゲームの世界にいるのは紛れもない事実です。
「さあ、古代竜、課金で得られる絶対防御と絶対攻撃よ。
金の力に死になさい。
そして私に不老不死とバックアップの力を与えるのよ」
基本設定の上に無理矢理書き加えられた課金設定。
課金しなければ使えない、対古代竜用の使い捨て呪文。
レベル1の初心者であろうと、古代竜を斃せてしまえる掟破りのクソ課金。
ヒーローやヒロインが古代竜を斃して爆発的にレベルを上げてしまうと、簡単に全ての登場人物を口説き落とす事ができてしまうお気軽システムです。
本当はこんなシステムを利用したくはありませんでした。
ですが今の私は、死ぬ以外のルートが用意されていない悪役令嬢なのです。
生き残るためには、腹立たしいクソ課金システムも利用しなければいけません。
それに、手に入れた古代竜の素材を使えば、親友と私がシリーズ化する時のために用意していた設定が、今でも使えるかどうかが分かります。
二作目三作目四作目にために用意してあった設定や、元々の基本設定がどこまで使えるか、確かめなければいけないのです。
同時にこれまで元に戻した設定、いえ、歴史をバックアップしておきたいのです。
私は悪役令嬢として殺されるゲームの歴史や設定に、完全に反した存在です。
いつバグとして排除されるか分かりません。
朝起きたら新生児に戻ってしまっているかもしれません。
いえ、改変のしようのない断罪直前の場面に飛ばされる可能性すらあります。
適当な所でバックアップしておかなければ、安心して眠る事すらできないのです。
さあ、王家や公爵家に知られないように確保したアジトで素材を調合しましょう。
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