第12話「勉強どころじゃねえ!^_^」

【星野夜空】


「それで……森香はどうして、俺にくっついてるんだよ」


「気分」


「な、なんだよ……その気分とやらは、説明してくれ」


「自分の胸に聞いてみなさいなっ……このむっつりすけべ」


「な、なんで急にそんなこと言われてるんだよ……」


「……」


 昨日の今日でまさかまた、森香が家に来るとは思わなかったが——せっかく忘れていた昨日の出来事が思い出される。


 艶めかしい脚に、はだけた胸……溢れんばかりのフェロモンのような柔軟剤のいい香りが俺を誘惑する。


 一歩間違えれば理性が吹き飛ぶ―—そんな一触即発な状況が鮮明な色で蘇る。


「……」


 おっと、ついつい見惚れていた。なんて可愛い奴なんだ、こいつは。今すぐ抱きしめたいのも山々だが——このあざとさがたまらないのだ。


「……なによ、見つめて」


「別に、見とれているわけじゃ……」


 頬を赤らめながら視線を背ける彼女。

 今の彼女には数時間前までの委員長の面影はない。すでに、上着のブレザーを脱いでいるため、ラフさが増して、本物のキャッチ―なJKって感じが滲み出ている。


 まあ、彼女もかくいう本物のJKなのだが……学校では見せないいつもとは違う雰囲気が高校入学してから1年が経っても慣れない。


「……顔真っ赤」


「別に違う」


「うわぁ、否定しちゃって~~凄ーく真っ赤だよ?」


「……う、うるさい……どうでもいいから、とりあえず離れろって」


「ぐへっ」


 ぷにっとしたお腹を肘で小突くと彼女はよろけるように離れていく。まったく、女の子の体というのはどうしてここまで柔らかいのか不思議なものだが、それよりもっと不思議なのは―—お腹がぷにっとしているはずなのに太っているようには見えないところだ。


 所謂着やせってやつだろうか。俺も昔こそいい体つきをしていたが、部活をしなくなってからというもののお腹の肉が気になっている。だというのに——森香ときたら全くと言っていいほど気にならないのが羨ましい。


 触りたい——なんて一瞬だけ思ってしまった俺は変態かもしれないな。

 

「それで……あれやらないのか?」


「あれって?」


「いや、文化祭とかの準備するって……」


「それは——うん、嘘……」


「嘘っ⁉」


 嘘なのか……こやつ、どうして俺の家に来た!? 


 ――なんて、あからさまな疑問ももはや生まれることはない。俺が溜息をすると、いつの間にか彼女は机にぐでーーっと寝そべっていた。


「うぅ……」


「大丈夫か?」


「……うん……ぅ」


 呻く森香、まるでゾンビのようだったが、机の上にずでーんと乗っかっているせいでどこが悪い物でも見ているような気分になる。


 まあ、それにしても——彼女も疲れているだろうし、もう少しだけ寝かせてあげようか。


「あぁ……あっぁぁ……」


「はぁ、ほんとに大丈夫かよ……」


 ぼそりと呟きつつ、俺は毛布を彼女の肩に掛ける。

 今にも潰れてしまいそうな真っ白な肩を包む毛布、その構図に若干……こうh……いや、なんでもない。


 すくっと立ち上がり、息を吐き、俺は自席に座って教科書を開いたのだった。



<あとがき>


 あげられなくてすみませんでした……。まじですんません!

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