第五話 死なないさ
女騎士を担ぎ、ダンジョン前に着く。
そこには、勇者御一行がおり、勇者は気絶しており、残りの二人が勇者の傷を癒していた。相変わらずのイチャイチャぶりだ。胸糞悪い。帰れと心の底から思う。
こんなもの見たくはないが、お使いを頼まれているのでそうするわけにはいかない。
女騎士を地面に優しく置き、記憶の一部を切り抜く。僕のことは記憶に残す意味はない。さっさと忘れて、勇者に書き換える。
そして、女二人から奇異なものを見るような目で見られながらもダンジョンに入っていく。
ダンジョンは階層が深くなるごとに敵が強くなる。螺旋階段状になっており、人類は一番下まで行ったことはないらしい。僕はいけるんですけどね。
螺旋階段の真ん中の穴から降りると一気に下に降りることができる。
穴に飛び込み、降下していく。
スタッ
地面に着地し、敵を正面から見る。
巨大な蛇が僕を見下ろしている。
邪魔だ。
魔力の核心を拳に握る。
そして、握り潰す。
体が捻れ、血飛沫を上げて倒れる。ここを守っているので後で蘇生してあげよう。
祭壇の上にあった指輪と槍を収納魔法にしまい、蛇くんを蘇生し、ダンジョンの外に出る。はじめてのおつかいはしっかりできた。
ダンジョンを抜けると勇者が目を覚ましていた。
「よう。無能魔法使い」
いちいち毒づいてくるのは悪癖だろう。改善しなければ愛想を尽かされるぞ。教えることはないけどな。
「久しぶり。最近どう。アンデットに負けた勇者さん。」
チッ
露骨に舌打ちしながら睨んでくる。女二人も睨んでくるが事実だろう?
「お前が抜けてくれてせいせいしているよ。新しく大賢者がパーティに入る予定になっているからな。」
そうかぁ。で?負け犬の遠吠えというやつだろう。恥ずかしくないのかな。
「僕にも今や勝てないんじゃない?僕はアンデット倒したしな。」
「ぶっ殺してやるよ。」
聖剣を構え、睨んでくる。
聖剣とは、意思を持つ剣のようなものだ。
勇者が持つ剣は強いらしいが僕の前では棒と同じだ。僕も少し遊んであげる。
魔力は無くなりかけだが、物理でも余裕だろう。
拳を握り、距離を詰めようとした時、ゾクリッという感覚が全身を駆け抜ける。
巨大な魔力が近くにある。そして、正確な位置は、、、魔王城だ。まずいな。敵に違いない。この感覚には覚えがある。
「急用ができた。またな。」
「逃げんな!」
「『黙れ』」
強制魔法を使い、黙らせる。
そして、地面を蹴り森を一気に駆け抜ける。
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<アイリス視点>
「薬草がなくなった。」
救護係がそう伝えた。大人数が怪我しており、足りなくなるのは目に見えていた。しかし、救護係がここを離れるわけにはいかない。
「私が行きます。」
私は何の役割も持たない。
メイドのような方に外に連れて行ってもらい、薬草を探す。
数分して、収納魔法に入るだけ入れた。
すると、
「ここは魔王城ですか?」
白装束を纏いフードのようなもので顔を隠している人は私にそう告げた。隠すこともないので、私は「そうです。」と告げた。すると、
「あなたは今、魔王城から出てきました。魔王は人類の敵です。つまりあなたも敵になります。」
こじつけがましい理論をのべながら杖を持つ。
すると、後方に魔法陣が出現する。
私を軽く消し飛ばすほどの火力はあるだろう。
「嫌だ。死にたくない。嫌だ。助けて。だれか。」
「誰も来ませんよ?」
口角を上げ、狂気的な笑い方をしていた。
そして、
「轟獄炎火球」
巨大で青く光る火球は私に確実に近づいてくる。死を覚悟し、目を閉じる。
すると、
「死なないさ。」
体が浮き、目を開けてしまった。すると、魔神王を名乗るシュガンノートにお姫様抱っこされていた。
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