第4話 僕は地下にいる

「4000年の貸しを返すとしよう。」


ふー。ギリギリ間に合った。


「今日はお帰り願おうか。勇者御一行。」


正義のヒーローなんかじゃないさ。ただの魔神王なのだから。


収納魔法を起動し、『とあるもの』を探す。しかし、見当たらない。落としたか?いや、もしかして、寝る時にどこかに置いたままにしたか?たしかに寝る前に直した記憶はないな。


<魔力探知>


魔力を持つものの位置を特定できる。ちなみに、自分を基調とする魔力を持つものには強い反応を示す。


さてさて、どこかな。近いな。正確には真後ろだな。振り向き、反応がある場所に近づく。すると、


「うおらぁぁぁ」


魔力探知に引っかかっているのだから、奇襲は無意味だ。振り返ることなく、


「動くな」


言霊を使い、強制魔法を行使する。ちなみにこの魔法は、僕が創り出したものなので唯一無二の魔法だ。


「ぐっ」


勇者は空中で静止する。弱いな。そして、当初の目的のものを見つける。


「その大鎌返して。」


手を出し、大鎌を返すように促す。


「えっ?あっ、はい。」


驚き、思考が追いついてない。残念なやつだ。


カチャンッ


鎌を担ぎ、魔力を込める。すると、刃の部分が黒光し、異質な雰囲気を放つ。


「じゃあ、さようなら。」


スパンッ


ドガァァァァァン


やべ。魔王城ごと切っちゃった。


再生再生。これでよし。勇者御一行は消し炭になっていた。仕方なし。じゃあ、帰りますか。


「次からは気をつけてね。」


<転移魔法>


「ただいま。」


「おかえりなさいませ。掃除は終わりました。魔力が枯渇寸前と取れます。お休みになってはいかがですか。」


「そうするよ。」


バタンッ


「おやすみなさいませ。」


そう言うと、彼女はステンドグラスに照らされる棺に運ぶのであった。





[魔王視点]


4000年。その言葉が心に残り続けていた。初代魔王から語り継がれている伝承の中にあったからだ。


魔神王。4000年以上前に眠りつき、今世紀以内に眠りから、起きるということも聞いていたからだ。


彼がそうだったのかもしれない。勇者の渾身の一撃を素手で止めてみせた。そして、勇者たちを一撃で葬り去るなど私では無理だ。格が違う。


でも、恐怖は感じなかった。白馬の王子様のようだった。


伝承には、地下にそれは眠っているというものだった。だから私は地下に行った。


地下に続く道にある大きな扉を開く。錆びており、開けづらいが埃などは見当たらない。


部屋に足を踏み入れてすぐに、執事の姿をした人に出会った。


「初めまして、魔王様。」


お辞儀をする彼女は、黒を基調とする執事の服を着ており、襟元には青紫色のリボンをつけ、足には低めのハイヒールをつけていた。


顔は均整が取れており、幼さを残す童顔に、赤色の瞳を光らせ、茶髪に天使の輪っかを想像させる光が見受けられた。

しかし、ここに入ったことがなかったから、誰かがいたとかは知らない。だから、ここにいて当然かもしれないし、違うかもしれない。


「ここに眠っている魔神王に合わせてくれ。」


「おやすみになっていますから、会話は難しいと思います。」


「見るだけでいい。」


「わかりました。」


すると、彼女は踵を返し、棺のような場所に向かっていく。ステンドグラスからの光を受ける場所には棺の中で静かに眠っている人のようなものが見られる。


そして、気づいた。棺の中に眠っているものは、さっきの王子様と黒い着物に、大きな鎌を持ち、優しさを感じさせる顔に、黒と白の髪を持つ彼は異質な雰囲気を放っていた。







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