第7話 初めての夜

森の中から出ない内に夕方をむかえた。

野宿になる事はあらかじめミズーリに言われていたが、大丈夫と胸を叩いて、わざとらしく咳込んでいたから放置してみた。

ツッコミなさいよと叱られた。

この女神の神聖さはどこにあるのだろう。

ジロジロ探して見つめてみたら真っ赤になって俯いてしまった。

以外と攻められると弱いみたいだ。

それにしても相当歩いた筈だが全く疲れない。ミズーリにも疲労の色はない。


片側の木々が伐採され道が広がっている場所に来た。

相変わらず硬く踏み締められた道は歩きやすかった。ここは街道の休憩所といった所なのか、森の奥に続く細い道が見える。

ミズーリの指示で中に入っていくと湧水があり細い川が更に奥に消えていく。

湧水の周辺も切り払われており空が見える。


「ここをキャンプ地とする。」

「うるさいよ。」

定番ネタを振り始めた女神の頭を引っ叩く。

「大体、野営の道具なんか持ってないぞ。」

「大丈夫って言ったでしょ。トールには万能の力があるのよ。」

「また念じろと?」

「念じなさい。」

ハイハイ。便利だな万能の力。

さて、どんなキャンプ道具を出そうかね。

はてさて?

「ミズーリ。」

「何?」

「万能の限界ってなんだ?能力的タブーとか、物量の限界とか。」

「そもそも規格外の能力だから、少なくとも神レベル以上の事は出来るわ。でなければ女神の能力を制限されている訳でもない私がトールに頼りっぱなしにはならないから。」

「ならばミズーリを天界に戻す事も?」

「間違いなく不可能。なんらかの使命もしくは条件を満たさない限り、たとえ天界に戻れたとしても直ぐ下界に落とされる。私の女神としての資質に問題がある訳だから。」

なるほど。

自分で真相真理に辿り着いたどこかの女神様が目の前で膝から崩れ落ちて涙目になっているが放置しよう。

「ならば、好き勝手にしますかね。」

イメージするのは夏に行った事があるバンガロー。空き地の広さはせいぜい駐車スペース二台分。ならば、懐かしの我が家のガレージ。

あの大きさに調整すれば私とミズーリ二人分くらい寝るスペースには充分だ。

ベッドを二つ、一応離して並べておく。

季節は不明だが特に暑くも寒くもないので毛布と布団一組ずつ。枕は私が生前使っていたテンピュール枕を。

「それ行けやれ行け。」

ついでに調理用の鍋や飯盒も準備。調理場作成に必要な煉瓦や鉄の棒や金網を用意し米や焼肉用タレ付き肉にサラダ用野菜を少々。私の大好きなメーカーの胡麻ドレを追加。

湧水の傍に簡単なテーブルセットをこさえる。灯り用にランタンを作る。はて、燃料はどうしようと思ったら勝手に光り始めた。

無駄に便利過ぎませんか。万能の力さん。

その晩は簡単に焼肉とサラダ、スープをご飯で頂いた。涙目になってた女神様は箸(不自由はないらしい)を振り回してンーンーと言いながら満足を示していた。

ちょろいな女神様。

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