#11





出現した魔の物とたたかい、たくさんの傷を負って、



体中包帯だらけの父さんと母さん。




僕「また・・・傷だらけ・・・」





ぐすん。




 「痛くないの??」





泣きながらそう問うた僕に、父さんと母さんはこう答えた。











父「痛むさ、もちろん。


  しかしながら、父さんと母さんは人の世を、里を


  まもる為に力をさずかった。


  だからたたかっている。


  人を救える、まもれる人間というのは、多くはいない。

 

  とても誇り高い事なのだよ。」





母「これが私たちのお役目なの。


  里の人たちは、食べ物になる作物を作ってくれていたり


  魚を取ってくれていたり、あなたのそのお着物もそうよ?


  作っている誰かがいる。皆それぞれに、お役目がある。


  それに封じの儀のときには、里にいる人達も皆一緒に


  力を合わせて結界を作ってくれているの。」




お役目・・・・。




そう言って、僕の父さんと母さんは、



傷だらけになっても、



眠りもせずに、たたかっていた・・・・。





それも・・・・





里の人間の為に・・・・







僕たちが人じゃない・・・って?






オニの仲間って・・・





どういうこと・・・?






自分たちの存在が知られていないという事に、とても混乱した。







あのおばさんは、何かとても



口にすることすら嫌そうな様子だった。



どうして・・・?




僕たちは・・・・・




じゃあ、いったい・・・・



なんのために・・・・



誰の為に・・・・



あんなに・・・・・?



傷だらけに・・・




へとへとになって・・・・





悔しい・・・・





許せない・・・・





自分の中にうず巻いていく、黒いもやもやが



だんだんと重くなり、足元から冷たい空気がただよい始めた。




里の人間に対するワクワクした気持ちなんて消えて、



浮かんでくる感情は、







怒りだけ






・・・












地面を見つめ、





ぎゅっと握りしめた手に力を込めたその時






ふわりと、





何かの感触が耳元をおおった。







「〝人″はいないが・・・私たちは・・・ぁれらの事を・・・・」







突然里の人間の声が、遠く小さくなっていく。




耳元が暖かく、少しくすぐったい・・・?




誰かに耳をふさがれているんだ・・・。





あたたかい・・・











―謎の声








「何も、聞かなくていい。






 忘れなさい。






 我らの力にけがれはない。





 おのれが揺れれば、そなたの力があやぶまれることになる。






 揺れるな。 小僧








 言葉には、魂が宿る。








 おの(魂)に触れる言葉は、





 


 自分で選び取れ。」








低く、落ち着いた優しい声色こわいろ










ぐるぐると嫌な感情がめぐっていた頭の中が、






急に静まった。







顔を見上げると、そこには・・・。














続・・・・・・



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