偽りの英雄~彼女に振られて異世界転生~《改訂版》

オクたんじろう

プロローグ

彼女に振られて異世界転移

  

「……今日は最悪な日だ」


 175cmほど、日本人にしては白めの肌、細見、男にしては少し長めの黒髪をセンターパート、上の中、いや上の下といった、それなりの顔をした男が呟く。



 俺は佐々木久遠ささきくおん。実家暮らし19歳。高卒。ニート。

 

 後悔はいっぱいあるが、いろいろ楽しい人生だったとは思う、一緒にふざけて笑いあえる友達も人並みにいたし、女遊びも人並みにしてきたし、かわいい彼女もいた。


 だが先ほど、半年ほど付き合ってた彼女に振られた。


 

「今までありがとう」



 その言葉がどんなに悲しかっただろうか。これで終わりだと考えると、何か胸が空っぽになる感じがした。


 別に浮気やDVや束縛などの悪い原因ではなく、ただ単に俺に冷めたらしい。

 しかも、俺はその言葉に流されて「わかったよ。今までありがとう」と言ってしまった。

 未練はあったが俺は流されて何も言えなかった。もし、ここでやり直そうとか何か言って、諦めなていなかったら、また結果は違ったのだろうか……




 今回の恋愛は本気だった、本気で彼女のことを幸せにするつもりだった。

 でも、人生はそうそう上手くいくものではないらしい。これまで流されて適当に生きてきたうえ、就職もできていないのだから当然だ。


 涙が止まらない、どうすればよかったのだろう。



 気づいたら夜景の見える展望台にいた。だが今は空に雲がかかり、今にも雨が降ってきそうだ。

 あいにくの天気のため、周りに人はいない。ここにいるのは俺一人だ。

 いつもはきらびやかな街並みが色褪せて見える、これは本当に現実なのだろうか。 


 そういえば、彼女と一緒に夜景を見に行こうと約束したまま、結局、俺が行くのを面倒くさがったせいで行かなかったな。 


「…………はぁ」 


 もっと彼女のことを第一に考えてやれればこうはならなかったのかもな。

 それとも、安定した企業に就職できていれば違っていたのだろうか。

 いや、それ以前の問題だろう……俺は流されて生きてきた。


 中学の時、友達に流され、一般的には悪いとされることをたくさんしてきた。

 深夜徘徊、たばこを吸って、いろんな悪いことをした。補導されたことも何度かある。

 だが、要領だけは良かったので、受験前に少し勉強するだけでそこそこの公立高校に入れた。まあ、中卒は嫌だったし、親に高校は行っとけと強く言われていたので、自分の意志で受験したわけではないが。


 高校になってからも、中学の時の馬鹿な友達と一緒に、クラブに行ったり、飲みに行ったり、相変わらずであった。高校卒業後もまだ働きたくなかったこともあり、現在はニートだ。


 馬鹿なことをして過ごしていた。

 俺は今までの人生、流されて生きてきた。自分では何も決めず、人に流されて生きてきた。

 「○○君って何考えているかわからない」など言われることもあったが、ただ単に何も考えずに生きてきただけだ。


 しかし、今の彼女と出会って、初めて人を好きになった。

 今までは女なんて、ヤることしか考えていなかったが彼女だけは違った。

 初めの出会いはSNSだった。SNSで話していくうちに彼女からグイグイ押され、遊びたいといわれた。それなりに可愛いし、ヤれたらラッキーくらいの感覚で遊ぶことにした。しかし、それから何回か遊んで、彼女の純粋な好意がきっかけだったのか、気づいたら好きになっていた。



「○○のこと好きだから、俺たち付き合わない?」



 俺から告白した。人生で初めての本気の告白だった。

 そして、俺たちは付き合った。

 俺は初めて本当の意味での自分の意志による行動をしたと思う。


 彼女は学生だったのもあり、頻繁には遊べなかったし、家で遊ぶことが多くて、いろんな場所に出かけることはかなわなかったが、人生で一番楽しい時間だった。世界が輝いてみえた。

 途中何度か、面倒くさくなったこともあったが、それでもやはり彼女のことは好きだった。

 幸せにしてあげたいと心から思っていた。


 しかし、人生はうまくいかないものだ。

 俺は彼女に振られたのだ。



 気づい時には手すりを超え、展望台のふちに立っていた。


 雨が降り出した。


 彼女のためにセットした髪が雨に濡れ、崩れていく。


「…………人ってなんのために生きるのだろう、俺は生きてる意味があるのか?」


 俺にとっての生きる意味は、彼女だけだったのだ。


 やり直したい……


 こんな気持ちになるなら初めから彼女のことを好きにならなければよかったのかもな。


 いや、こんなこと考えるのは無駄だな、彼女のことは忘れよう、もう終わったことなのだから……

 どうせ一週間もしたら友達と飲みに行って、ほかの女子に声をかけたりして忘れているんだろう。俺は流されやすい人間だから、周りに流されるまま楽して生きて行こう。


――何か気分転換がしたいな。

 そういえば友達にゲームを誘われていたな?


 そのゲーム名はたしか『フェアシーテ・オンライン』だ。魔法などを使うことができ、いろんな陣営に加わって戦うゲームだったかな? まだ人類陣営でクリアされたことが1度もないって言ってて、無理ゲーだとか、鬱ゲーだとか友達は言ってたな。他には「名声値が足りなくて試練受けられない」や「最終決戦までに神話級になれないから、ゲーム開始をもっと早い時期にしろ」や「大罪の力が手に入れられない」とか言っていた。よくわからないが、とにかく難しいゲームらしい。


「……よし、帰ってそのゲームでもしてみるか」


 友達に一緒にゲームしようという連絡をして、家に帰るため、展望台のふちから戻ろうとしたとき――スッと、ふと誰かから、背中を押された気がした。


 しかし、周りには俺しかいないはずだ。


 俺は慌ててとっさに手すりを掴もうとしたが、手すりが雨で濡れていて、うまくつかめない。


 展望台から落ちていく。地面は土だが、高さ20mはある。生存は絶望的だろう。


「あ……


世界がゆっくり進む


 今までの人生は、自分で考えることもせずに流されて生きてきた。そして彼女と別れ、生きる意味も見いだせないでいるし、生きてる意味もないと思っている。だがそんなこと思ったとしても、死にたいかと言われれば、それは違う。


 ゆっくりな世界の中、これから死ぬんだな……と考えた途端、恐怖が襲ってきた。


――まだ、死にたくない…………」



 その瞬間、眩い光が俺を包んだ。



「――ほんと空っぽ」



 光に包まれている中、何か聞こえた気がした……


★★★★★★★★★★

主人公の基礎能力※主人公には見えません。

魔力量:?

身体能力:G

魔力操作:?

精神力:G 

魔法:?


一般人の平均値はF

――――

※しばらくは一日10話ほど投稿します

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