ゴブリンさん達の、悩みごと。

 ──ガサガサ……ぴょんっ。


「しろうさぎさん、やっと見つけた!!」

「あ! スライムさん!」

「はい、そうです。ボクです、スライムです。覚えてくれているなんてなんか嬉しいなぁ……」


 揺れる茂みの中から姿を見せたのはあの日のスライムさん。彼はどこか急いでいる様子で全身をキラキラと汗で煌めかせながら三匹の前に現れます。


「……なに、このスライム。うさぎの知り合い?」

「え、あ、うん。そう、この前知り合ったスライムさんなんですけど、とってもひたむきで頑張り屋さんの素敵なスライムさんなんです」

「わぁ、なんか凄くプルプル揺れてますね……か、可愛い……」


「あ、それなら、す、少し……触ってみますか? ……って、そうじゃなかった。しろうさぎさん、大変なんです助けてください!! ひゃっ!」


 ──ちょん……ぷるんぷるん……

 リリパットちゃんに突かれ左右に揺れるスライムさん。


「え、ええと、スライムさん。わかりました。落ち着いてください。一体何があったんですか?」

「は、はい。それが──」


 そうしてスライムさんはここへ来た理由を話て聞かせます。その話によると、自分の一言がきっかけでここ数日間森の最後の住人であるゴブリンさん達がとても危険な状況に陥ってしまっているということなのでした。


「──それで、だから、ボク、なんとかしなくちゃって考えたんですけど、何も思いつかなくて……それで……」

「で、自分じゃどうしようもないからうさぎを訪ねて遥々ここまで来たと……」

「はい……そうです。情けないけど、ピクシーさんの言う通りです」


 ──ちょん……ぷるんぷるん……


「だってさ。どうする、うさぎ?」

「いや、どうするも何も……ピクシーさんだってきっとまた同じことを考えてると思う」

「ふん。じゃあ、決まりね。スライム、ゴブリン達は今どこにいる?」

「そ、それじゃあ、助けてくれるってことですか?」

「あのねぇ、勘違いしないで。助けない理由があるなら私にその一つでも今すぐ言ってみなさいよ」


「あ、ありがとうございます」


 ──ちょん……ぷるんぷるん……


「ほら。そうと決まれば、さっさと行くわよスライム、案内しなさい!!」

「は、はい!!」


 そうして三匹はスライムに連れられゴブリンさん達のいる場所へと向かいます。そして森を進み辿り着いたその場所では今まさに駆け出し冒険者さん達と戦闘中のゴブリンさん達の集団がいました。その光景を見た三匹はそれぞれの想いを口にします。


「は? なんであいつら自分達で自分達の事殴ってんの?」

「でも、皆さんとってもポジティブですね!!」

「なるほど、そういうことですね……」


「行けー、進めー、叩けー、わーー!!」


 大声で自らを鼓舞しながら負けても負けても駆け出し冒険者さん達に立ち向かって行くゴブリンさん達。そんな彼らは敵味方見境いなくその手を振り下ろします。時に後ろの、また時には前の仲間達を叩くと次から次へとその場に倒れていきました。その姿を見たしろうさぎさんはそこにゴブリンさん達の中にあるだろう悩みの種を垣間見たのでした。


【ゴブリンさん達の悩みごと】


 ・ポジティブ。

 ・とってもポジティブ。

 ・全力で、ポジティブ!!

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