その15 ありがとう作戦

 化学療法が始まってしばらく。

 通常の食事が気持ち悪くて食べられなくなりました。

 食べようとは思うんだけど、味とか匂いがだめ。

 母に電話して、おそうめんとゼリーを持ってきてもらいました。

 冷たいものならするする食べられてたので。

 そうめんは毎食食べてたので、毎日持ってきてくれた母に感謝です。

 その頃、吐き気対策になにかないかと調べていたところ、氷がいいことが判明。

 食前と食後に氷を舐めておくと吐き気がでにくいんです。

 吐き気止めの薬もいただいてはおりましたが。


 そんなこんなでまともなものが食べられない日々。

 しかーし、私はそんなにげっそりしませんでした。 

 なぜなら……私、太ってるんです(笑)

 ラクダがこぶに水をためているがごとく、体に充分栄養がついてるので食べられないことでの体力低下による弊害は免れました。

 NICE脂肪、ブラボー脂肪。

 化学療法が終わったら食欲も普通に戻りましたけれども。

 

 化学療法終了後3週目くらいから骨髄抑制が始まりました。

 白血球の数が減っていくんです。 

 成人の正常値は4千~8千個/mmなのですが1000くらいまで落ちました。

 これ以上下がると確実になにかに感染する状態です。

 リハビリやタバコを吸いに出かけた後はうがいと手洗いは入念に。

 そして増血剤も打ちました。

 この増血剤、打ってしばらくすると腰が猛烈に痛くなるんです。

 たぶん、血液を必死に作ってくれてるのだと思うんですけど。

 もう脂汗かくくらいの痛みで、毎回痛み止めいただいてました。

 

 その頃から髪が抜け始めました。

 もう動くたびに髪抜けるし、掃除をしてもそこらじゅう髪だらけだし、抜けた髪が襟元に入ってちくちくするし、もういっそのこと早く全部抜けてくれないだろうか、と思ってました。

 抜け始めたときはそれなりにショックでしたけれどもねー。

 

 それなりに色々副作用が出始めていましたが、なぜか体のだるさなどはなく。

 車椅子で元気にお散歩していました。

 そういえばうちの父がガンになったときも元気にうろうろしていました。

 たぶん遺伝だと思います。

 特にしんどくもないので、リハビリも普通にしていました。

 看護師さんに

「今まで同じ量の同じ薬剤の化学療法をした人の中で、遠野さんが2番目に元気!」

 って驚かれました。

 先生からは

「血液学的にはそれなりに重い副作用でてますからね」

 と念を押されましたが。

 

 いつの頃からか、私はあることを決めていました。

 それは「1日10回は『ありがとう』を言う」ということ。

 ご飯を持ってきてくれたら「ありがとうございます」。

 掃除にきてくれたら「ありがとうございます」

 リハビリのときも「ありがとうございました」

 結果的に10回以上は言ってように思います。

 「ありがとう」を言うときって、ムスッとした顔で言うことってまずないですよね。 

 大抵笑顔で言うことが多いと思います。

 前回も書いたとおり、重い病気を治療していく中で笑顔って肝心なんです。

 それもあって「ありがとう作戦」を開始したわけです。

 なにより体質的に抗がん剤に強かったのが功を奏したのだと思いますが、この「ありがとう作戦」もまたそれなりに効果があったはず、と私は信じています。

 

 この「ありがとう作戦」は日常的にもいいかと思います。

 ちょっと最近気分が落ち込みがちだなー、と思ってるそこのあなた!

 ぜひ試してみてください。

 意外な効果があるかもしれませんよ。

 

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