戦時中の大切な畑

この女学校とやらは、女子のみの学校で家庭婦人としての教養や裁縫を学んだりするらしいが、今は学徒勤労令により、あまり授業は行われず。校庭の周りで畑をしていた。


今朝の女子生徒はしま みつこ

オカッパの愛想のいい子。みっちゃんと呼ばれている。

他に34人の生徒がいる。永井先生はめがねの真面目そうな男の先生。

腕まくりをして、手ぬぐいを首に巻き今日植えるという種イモのため、クワを振り上げ畑を耕す先生。

私達もそれに続いた。


なんとか一日を終え帰り道

「みっちゃん新聞ってある?」

「新聞やったら、八千代ちゃんちにもあるんとちゃう?女学校通わすくらいやもん」


そうだ。ばあちゃんはよく言っていた。

女学校にいかせてもらったと。


それにしても、このままなんだろうか.....。

夢、まだ終わりませんか?

そろそろ起きて仕事いかないと.....。


ばあちゃんは、今は老人施設にいる。何が起こったのかサッパリだが。

夢じゃないとしたら.....


普通であれば、この状況を覆し元の時代にもどる術を探すのだろう。

しかし順応性の高い私は出来る限り情報を集め、この時代を生き抜く決心をする。

いや、決心なんてカッコいいもんじゃない。

元にもどる術なんて、分かるはずも無いからである。

それに、ちょっとまだ夢かな.....と半信半疑でもある。


周りにいるのは少なくとも、家族であり先祖だ。おひささんには赤ちゃんの時に抱っこされた.....らしいし。


「ただいま。」

私はきっと9人兄弟の真ん中のはず。

「八千代ーっ。畑みずまきして!ちょっとネギも3本取ってきて」

この人だ。口うるさい姉さん。今朝私を起こした。


あれ。この四角い顔はもしかして....芋ばあちゃんか。小さい私に干し芋ばかりくれてた、ばあちゃんのお姉さん。

私はいつも、と呼んでいた。去年亡くなったんだ.....

それを思うと口うるさくても憎めないなぁ。


「ほらっ井戸行って水汲んで!川はもう危ないから」

「はいー」

え!この広さの畑を、水汲んで....無理でしょ。

20代半ばの運動不足にはこたえる...


はぁーいつまでかかるやら

コトン

後に弟、妹が続く。助っ人登場だ。


「はーいっどんどん運んで!」

八千姉やちねぇ 自分は汲むだけなんてズルい!!」

バレたか。


クタクタになるも、ネギを抜いて帰る

「あんたはアホか!どこに根っこから抜くアホがおる」

はい。ここにいました。アホです。

スーパーに売ってるネギは根付きだが、この時代は切るのが普通。またのびてくるから。


私は畑でネギを植え直した。

あぁ。この土の感触、ネギの匂い。リアル過ぎる。

夢ではなく、来たのですね?私この時代に。


今晩は雑炊?おじやのようなもの。ほとんどがイモ。

愛想のネギがのっている。


「ただいま」

「おかえりなさい。ご苦労さんです」

お父さん.....いや私のひいじいちゃんである。


あぐらをかいていた子たちも、姿勢を正し正座をする。


「疎開して来た兄弟をうちでしばらく預かることになったから。おひささん、せやなぁ。

夏代と八千代連れて行ってきてくれるか?」


「どちらですか?」

柳原やなぎはらさんとこに泊まってるて。」

「分かりました」


翌朝、私達は柳原さんちへ出向く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る