ママはママよ?

「結果から先に言うと、あの校長はもう教師の免許取られたから、何年かたって免許もう一回取るまでは教師にはなれない。」

「え、そんなに早いの?そういうのってもうちょっと時間かかりそうだけど...」

「そうね。実際には2週間ぐらいはかかるかもしれないけど、まぁやってることがかなりクロいから今回の件と繋がって全部明るみになるわよ。」

「え、っと...僕が気になるのはそのことももちろんなんだけど、ママって一体何者なの?」

そうだよね?

「どういうこと?ママはママよ?」

「まぁそれはそうなんだけど...どうやったらそんな偉い人と連絡が取れたりするの?

「高校の頃同じ学校だったのよ。運がよかったとしか言えないわね。」

「で、色々調べた結果渡して、あとはむこうにお任せ、って感じ。」

「ママ、やっぱりすごい人なんだ...」

調べたって簡単に言うけど、そんなに簡単にできることではないよね...?

「まぁ、色々あったしあなたたちが望むなら、転校、でもいいのだけど...」

「いや別にそこまではいいかな~」

おそらく僕達兄妹全員が思っていることを僕が代弁する。

「そう?芸能人学校、という手もあるのだけど...」

??

「え、ちょっと待って。」

「なに?」

「芸能人学校?」

僕の認識が間違ってなかったら有名人の子供が行く学校で、僕が望んでも行けるような場所じゃないんだけど...

「ま、私が最初からそこを選ばなかったのには理由はあるんだけどね。」

「そ、その前に僕達にはその学校に入る資格なくない?」

「一応審査には通ったから、いけるにはいけたんだけど...」

「いけたの!?」

え?本当にこのお母さん何者??普通の仕事してるって言ってたよね?

......いや普通の仕事でお付きの人とかつかない?あれ?僕は今まで誤解してたのかも...?

「まぁでも私はあなたたちにいわゆる“普通”の生活を送ってほしいのよね。だから私のお付き見たことないでしょ?」

「ん、たしかに。そういう人がいることしか知らなかった。」

千尋の言う通り、お付きの人がいるっていう事実は聞かされているけど、実際に見たことはないような...?

「いやー、一応なるべく疑問を持たせないようにはしてたつもりなんだ~」

え、そんなことある?お母さんやっぱりとてつもなくすごい人じゃん...


「ま、そんな話はもうおしまい!あなたたちの話、聞かせてよ。」

そういって話を切ると、僕達のここ最近の様子について聞いてくる。

「あ、そうそう、今日は千尋がクラスの子と喋ってるところ見たわよね。千秋。」

「うん!びっくりしたよ!」

「へぇ!それはいいことじゃん!千尋にもなにか思うところがあったんだろうね~?」

「んー...にぃにもねぇねぇにも迷惑かけたから、私もなにか頑張ろうと思って。」

「千尋のその気持ちだけでも私達はとても嬉しいわ。」

そうだよね。僕も今回千尋の交友関係の狭さを知ってたのに無視しちゃってたし...

「あ、お風呂入ったみたい。千尋、若葉、先に入ってきなさい。」

「はーい。ねぇねぇ、髪洗って。」

「もう、千尋は仕方がないわね。」

そういって2人はリビングから出ていった。

「さて、千秋、あなたに話があるの。」

「なに?どうしたの?ってもしかしてだけど...」

「そう、あなたと2人で話したかったの。」

い、いつのまにかお母さんに僕が1人になるように誘導されてた?

「あなた、今回の件に千尋と同じくらい、いやそれよりも多いくらいの罪悪感かんじていない?」

う、お母さんにはバレてたみたい...

「姉弟の中で唯一の男だし、そういう風に責任を感じるのも分かってる。ましてや、私達がずっと家にいないからね?あなたが感じる責任が大きくなっているのかも。それは本当に申し訳ないわ。」

「い、いやママが謝ることじゃないよ。僕は頑張るよ。姉弟唯一の男として。お姉ちゃんも、千尋も、なにかがあったらママの手を借りずになんとかできるように。」

するとお母さんは微笑んで、

「うん、いい心構えだと思うわ。でもあまり気を張りすぎないでね?あなたもいっぱいいっぱいになったら私じゃなくてもいいから、家族を頼りなさい。」

「うん、」

「まぁといっても千秋は1人で抱え込もうとするだろうから、それはあなたが直さないといけないところよ?」

う、そこまでバレてるのか...

「まぁその判断は私達、親の仕事だと思うから、適宜報告はもらっていく感じにするけど...」

そんな話をしてると、

「にぃ、髪乾かして。」

千尋がいつものように髪を乾かしてもらいに僕のもとへとやってきた。

お母さんは1つ手拍子をして話を区切ると、

「この話はおしまい!さ、乾かしてあげなさい!女の子の髪は命なのよ?次、私がお風呂いただくわね~」

そういってお風呂の準備をしにいったみたい。

「じゃ、千尋、千尋の部屋いくよ。」

「ん、分かった。」


千尋の髪を乾かしながら、僕はお母さんがいなくても、千尋や、お姉ちゃんが困っている時、必ず救えるような人にならないと、と今回の件がきっかけで強く思った。



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