第29話

 高位貴族となるとフィアン達が来るのね。アイラは療養で領地に下がっていたけれど、今回は来るのかしら?


そんな事を考えつつベッドへダイブして翌朝メイジーに起こされる。


 翌朝からは変わらずに出勤。ニール様は変わらずに仕事をしている。公私混同する人では無いらしい。けれど、変わったのは周りの態度。魔導師塔や医務室へと来る人はみんな婚約おめでとうと声を掛けてくれるようになった。


そしてモーラ医務官は孫がようやく幸せになったと我事のように喜んでくれたの。そして午後一番で泣きそうな顔で医務室に駆け込んできたのはサウラン副団長。


「なんで、リアちゃん!ニールの物になったの?」 


「私は物ではないですよ。サウラン副団長」 


「きっとニールがリアちゃんを上司の権限で手籠に、そして婚約者になってしまったんだよね。怖かったね」


これにはモーラ医務官も呆れている。 


「いえ、ニール師団長はそんな事していません。むしろ私が気のないニール師団長に迫って婚約者にしたが正解です」


「リア君、その言い方だとアベルが勘違いしている。まぁ、いいけれど」


「リアちゃんってそんなに積極的だったんだ。俺ならいつでも迫ってくれても良かったのに。ああ、リアちゃんがニールの嫁になるなんて。俺、ショックで立ち直れない」


悲しみに打ちひしがれているサウラン副団長の後ろから声が聞こえる。


「そうですね。リアにならいくらでも迫られたいですね」


その声に振り向くとニール師団長が書類を持って立っていた。


「アベル、諦めなさい。リアの崇高な愛(魔石)は私に贈られたのですから」


モーラ医務官はこの微妙に噛み合っていない話のやり取りの状況に匙を投げている気配すらある。


「リアちゃん、いつでも俺に頼ってくれていいからね」


そう言って手を取ろうとするが、ニール師団長にパシリと手を叩かれる。


「アベル、リアの仕事の邪魔をしないでください。行きますよ。ではリア、しっかり仕事をこなすように」


 そう言ってニール師団長はサウラン副団長を連れて医務室から出て行ってしまった。モーラ医務官からはあんまりアベルを揶揄うなと笑われたわ。

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