終のスガタ-第五魔王異世界侵食紀

赤胡瓜の妖精

プロローグ/令和3年10月14日

プロローグ/令和3年10月14日

誰もいなくなった教室で平岩周平は机に突っ伏して眠っていた


「(・・・雨・・・・・・止んだか・・・?)」


目を開けるとホームルームには、まだ残っていた雨脚が鳴りを潜め、空は茜色に染まっていた


「やっぱり、ちょっと待って正解だったな・・・って、1時間以上寝てたのかよ」


時計を見ると想像以上に時間が過ぎていた

この時間なら帰宅部はもちろん、熱心でない部活は大体帰っているだろう

周平は背中をゴリゴリと鳴らしながら帰宅の途につくことにした


---------------------------------------


周平は雨で濡れたアスファルトが夕陽に照らされて輝く通学路を目を細めながら歩いていた


「目ぇ、いってぇなぁクソ。近場の高校なんて行くんじゃなかったなぁ」


周平は自宅から見て東にある高校に通っていた

中学の時の担任からは電車で30分くらいの微妙に遠い高校を勧められていた

しかし、周平は面倒なので近場の高校を受験した結果、

西にある駅に通わずに登校では朝日に下校では夕陽に悩まされている


「30分くらい待てば雨止むと思ったのに・・・つい、寝過ぎちまったな」


ぶつぶつと独り言を言いながらコンビニの前に差し掛かって横断歩道で立ち止まった

片側一車線の道路は、普段よりゆっくりと車が走っている。運転手も眩しくて前が見ずらいのだろう


「そういや、今日母さん帰り遅いって言ってたっけ。父さんが晩飯作・・・るわけないか」


多分ろくな晩飯じゃないだろうな、と溜め息をついていると、

やけにノロノロ運転のハイブリット車が走ってきた


「(なんだ? 爺さんが運転でもしてんのか?)」


高齢の男性が運転する車が信号の近くまで走ってきたその時、タイミング悪く信号が黄色に変わった

男性は慌ててブレーキを踏もうと足に力を入れる


「え!?」


しかし、男性が踏み込んだのはアクセルだった

制御を失った車は雨で濡れた路面にハンドルを取られ、周平のいる歩道に突っ込んで来た


「嘘だろ!?」


車と壁に挟まれて周平の体は肉塊に変わった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る