〜4巡目〜 開けれない金庫
「ナガノさん、あなたが勝っても構いませんよ。あなたと私は同じ考えなのですから。ただ今のこの状況を楽しみましょう。」
若者だらけのグループに入り込んだ老人、朝風。彼が何者なのか未だに分からない。
「そうですね。最後は勝ちにこだわらず、楽しんでいきましょう。」
とにかく、勝つことだけに集中しよう。
これで、最後になるから。
………
最近、テレビで開かずの金庫を開ける企画が流行ってますね。ただ、中には開けてはいけないとされる金庫もあるみたいで。今回はその話をしていこうと思います。
〜〜〜
ある時、I県K市にある旅館を取材したんだ。そこのある部屋に座敷わらしが出るという噂があってね。その部屋に3泊4日で泊まったんだ。
しかし、2晩待っても座敷わらしは出なかった。このままでは記事にできない。そう思った僕はこの旅館を隅々まで散策して曰く付きの物を見つけることにしたんだ。
それで一階の奥の方を探索していると、大きな鉄製の古びた金庫を見つけたんだ。全体に埃が被り、しばらく開けられては無さそうで、開かずの金庫というやつだろう。
ちょうど女将さんが近くにいたから、僕は金庫の事を聞いてみることにしたんだ。
「いけません。それに触れてはいけません。」
笑顔だった女将さんが一変。とても怖い顔で迫ってきたんだ。
「そんなにまずい物なんですか?」
「お察しの通りです。これ以上言えば私も危ないので、ここから出てって下さい!」
僕はそそくさと金庫の前を後にした。
だけど、夜になってもあの金庫の事が気になって仕方が無かった。
自分以外部屋にいないのに、子供の笑い声が聞こえてきたけど、それすらも気にならないくらいにね。
だから、草木も眠る丑三つ時に再び金庫のある部屋へ向かったんだ。
金庫は昼間と変わらず、部屋に佇んでいた。
僕は金庫の中を見ようとダイヤルに手を伸ばしたんだ。
『「いけません。それに触れてはいけません。」』
ふと昼間の女将さんの言葉を思い出した。
僕は晴れるのをやめて、後ろを振り返らず真っ直ぐに部屋に戻ったんだ。
不思議と、すぐ寝ることは出来たよ。
で、問題なのは次の日の朝。早朝にも限らず、多くの人が金庫の前に集まり、騒然としていたんだ。
「何かありました?」
「金庫の…中に…血塗れの…死体が!」
群衆をかき分け金庫の方へ行くと、扉が開けられていた。その中には、死体と言うよりも肉塊に近い物が入っていたんだ。
僕はすかさず携帯を出し110番に通報しようとしたんだけど、女将さんが声をかけてきて、
「もう警察には連絡しましたよ。」
と言ってくれた。
すると、外からパトカーのサイレンが鳴って、
「今日見たことは他の人に言わないで!」
と一言告げると、警察の元へ行ってしまった。
もし、僕があの金庫を開けていたなら…どうなっていたんだろう?
ポッ…
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