〜2巡目〜 堰き止め鬼

人は元来より過ちを犯します。

今から語るのは、落ち着いて物事を見なかった事で起きた悲劇の怪談です。


〜〜〜

播磨国はりまのくにのある山中に鬼がいました。ある年の冬、鬼はそこに住み着くと枝や土嚢どのうを使って生田いくた川の水を堰き止めてしまいました。鬼はそれだけにとどまらず、堰き止めてできた湖を利用して魚の養殖を始めた。その湖の魚は質が良く、高く取引されるようになりました。


当然、下流の農民達はこの事に激怒しました。田んぼに入れる水の量が減り、魚も売れなくなってしまったからです。


そこで農民達は立ち上がり、山の上の鬼を倒す事にしました。


下流にある8つの村から100人程の腕利きの若者が集まった上に、地元の浪人達も力を貸してくれました。


男達は深夜、山を駆け上がり、鬼の住処を強襲しました。


鬼は声に気づくも時既に遅く、なすすべなくその首は地面に落ちました。


それから一夜して、男達は鬼が置いた枝や土嚢を片付け始めました。春の田植えのため、生田川の水量を増やすためです。


三日三晩の作業により、生田川は元の状態に戻りました。


こうして、鬼はいなくなり、平和は戻ったのでした。


しかし…


その年の8月、台風が播磨国を襲いました。とてつもない豪雨が降り、ありえない程の大水害を引き起こしたのです。


奇跡的に生き残った人々は口を揃えて言いました。


『あの鬼は、洪水を抑えるために水を堰き止めたんだろう。』と…


これでこの話は終わりです。

最後に、これは私なりの疑問ですが、この話で呼ばれている『鬼』は本当に鬼だったのでしょうか?もしも違ったとなると、これも落ち着いて物事を見なかった悲劇になりますね。


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