【SS】クロちゃん「好き! ワイちゃん好き~!」 ワイ「酔いすぎですよクロちゃんさん」

文月 景冬

第1話「出会い」

渋谷


パリピ「あっ、クロちゃんだ! 殺せ~!」


ドワアアアアアッ


クロちゃん「ひぃ~! オイラが何したって言うんだしん~!」タッタッタッ


若者「水曜日のダウンタウンでーす! 止まってよクロちゃーん!」


クロちゃん「いつものスタッフさんじゃないから騙されないしんよ!」タッタッタッ


ガッ


クロちゃん「あっ! こけるしん!」ズザァッ


クロちゃん「いつつ……」


DQN「よぉし、手間かけさせやがって。どうする? とりあえず剥いとく?」


パリピ「説! クロちゃんは全裸で自宅まで帰れる説!」


クロちゃん「ひぃ~!」


ワイ「……」スッ


若者「ん? 誰、この女の子? クロちゃん知り合い?」


ワイ「……あなた達、こんなことして何が楽しいんですか?」


DQN「あ?」



クロちゃん「あうぅ……」ブルブル


ワイ「震えていますよこの方」


ワイ「集団で弱者に暴力を振るうなんて最低です」


パリピ「なになにー? クロちゃんのファンかよ。高校生はおねんねする時間だぜ」


クロちゃん「し、しん~?」


ワイ「警察呼びますから」スッ


DQN「おいおい、あんまりわけわかんねーこと言ってんじゃねぇぞ。可愛い顔してるからって許されねえぞおい」


若者「君、水曜日のダウンタウン見てる? 変態で嫌われ者なんだよクロちゃんって。だから──」


110番「」プルルルルルッ


パリピ「あっ、このクソ女! おい、クロちゃんなんて放っておいて行こうぜ!」


DQN「なんだよ! 折角クロちゃんに会えたってのによぉ!」


若者「知ってる? クロちゃんって血糖値300超えてるんだよ? 君が今守ったとしてもすぐ死ぬよ?」


タッタッタッ


シーンッ



ワイ「いなくなったようですね」


クロちゃん「あ、ありがとう。助かったしん……」ノソッ


膝「」ダラダラ


ワイ「あっ、膝に怪我をされていますね。これ、使ってください」スッ


クロちゃん「こんなに綺麗なハンカチ……。いいんだしん?」


ワイ「はい。血を流されているのに放ってはおけませんよ」


クロちゃん「優しいんだしんね。最近の若い子はオイラを見ると過激なことばかりしてくるってのに……。テレビとプライベートの区別くらいつけて欲しいしん」


ワイ「クロちゃんさんってテレビに出演されている方なんですか?」


クロちゃん「えっ、オイラの事知らないのかしん?」


ワイ「申し訳ないのですが」


クロちゃん「まあ、あんまりゴールデンには出てないから仕方ないしんよ」


クロちゃん「オイラはお笑い芸人。団長とHIROと3人で安田大サーカスだしん。よかったら覚えておいてほしいしん」


ワイ「そうですか、お笑いを。ふふっ。言われてみれば、見た目と声のギャップが面白いですね。さぞ、子供から大人気なんでしょうね」



時計「」カチッカチッ


ワイ「ん、そろそろ時間のようです。それでは、私はこれで」バサッ


クロちゃん「待って! このハンカチは洗って返すから連絡先を──」


ワイ「いえ、そちらは差し上げます。お好きになさってください」


クロちゃん「そ、そうかしん……」


クロちゃん「だったら、せめて名前だけでも教えてほしいしん!」


風「」ビュウウウウウッ


シーンッ


ワイ「……」クルッ


ワイ「ワイ。私の名前です」


クロちゃん「ワイちゃん……。また、会えるしん!?」


ワイ「ご縁があれば」


青信号「」パッ


スクランブル通行人「」ヅカヅカヅカ


クロちゃん「あっ! 人混みに呑み込まれ……。行っちゃったみたいだしん……」

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