魔法少女がカノジョになるってよ。マジで?

あゆう

第1話 深夜徘徊魔法少女

 俺のクラスの委員長である望月もちづき 芽衣めいは口数が少ない。いや、訂正しよう。俺にだけ少ない。というか冷たい。まぁ俺の普段の行いが行いだからそれはしょうがない。


 そんな彼女の姿は、腰まで届くツヤのある黒い髪に大きな瞳。スラッとしたスタイルの美少女。

 凛と立つ姿は超クール。俺に対する態度も超クール。そして今日もその冷ややかな視線を俺が独り占め中だ。出来ればお断りしたいんだけどな。



「真鍋くん。真鍋まなべ 紘斗ひろとくん。邪魔よ」

「んぁ?」



 昼休み、ベランダで足を伸ばして寝ていた俺を見下ろしてそう言ってくる望月。その手には白くなった黒板消し。さすが委員長。

 スカートの中は……残念ながら見えない。



「あぁ……悪い」

「…………」



 足を避けると望月は何も言わずに俺の前を通り、その先に立て掛けてある木の棒を手に取ると、それで黒板消しを叩く。

 が、それによって出たホコリ全てが、風によって望月に向かってきた。



「ぷわっ! けほっ……けほ……」

「風向き考えろよ……」

「っ!」



 おーおー、そんな睨まなくてもいーんでないの? 当たり前のことを言っただけなのに。

 で、望月はムキになったのか知らないが、止めること無く黒板消しを叩き続けると、白くなったブレザーの袖をハンカチで拭きながら教室の中に戻って行く。


「ふんっ」

「頑固だねぇ。それにしても……眠いな……」



 そして、俺はそのまま目を閉じた。



 ◇◇◇



 その夜、学校でたっぷり寝たせいでおめめぱっちりになった俺は、夜食を買いにコンビニに向かっていた。もちろん窓から抜け出して。怒られるからコッソリとな。

 その時──



「待っちなさぁ〜い!」

『ダ〜ミィ〜ン』



 変なことを叫ぶ黒いモヤモヤしたものと、ピンク髪ツインテールの魔法少女が目の前を通り過ぎて行った。



「なんだ。魔法少女か。……ん? 魔法少女? …………魔法少女ぉぉぉっ!?」


 いやいやいや! そんな馬鹿な! あれはニチアサだろ!? 今は夜なんだけど!?

 ってそうじゃなくって! え? 撮影? こんな深夜に? まさかな。ってことは本物? つーか本物の魔法少女ってなんだよ。あんなのテレビの中だけだろうが!


 俺がコンビニに行くっていう目的も忘れてパニクっていると、さっきの魔法少女(仮)が向かった山の方から光が見えた。



「おいおい……まじかよ」



 俺はそこで一つの仮説に辿り着いた。

 これはもしかして合法ロリっ子成人向けDVDの撮影なのではないか? と。

 そうと決まれば俺のとる行動はたった一つ。



「エロスが俺を呼んでいるっ!」



 山に向かってダッシュあるのみ!

 そして辿り着いた俺の目に写るのは──



「罪もない人の心を操るなんて、この魔法少女メイがぜ〜ったい許さないんだからっ!」

『ダ〜ミ〜ン!』

「お願いフェアリスタクト! 力を貸して!」

『ダ、ダミッ!?』

「いっくよぉ〜! ラヴィアスハート・フルシュ〜トォ〜!!」

『ダッ! ダミィ〜〜〜〜〜ン!!!』



 白とピンク、時々銀色のフリフリの服を身につけた、見た目小学校の高学年くらいのメイと名乗る魔法少女(仮)の姿。どこも服は破けていない。

 そしてその魔法少女(仮)が恥ずかしい技名を叫ぶと、手に持っていた棒からピンク色の光が発射され、それに当たったダミダミ言ってるモヤモヤがシュウゥゥゥ……って音と共に消えた。


 ……マジかよ。


 俺が口ポカーン状態で固まっていると、魔法少女(笑)が装備しているポーチの中から何かが飛び出した。



「やったンゴね! メイ! これでまた悩める人を救えたンゴ!」


「うんっ! メイ、頑張ったよっ!」


「じゃあ早く変身解いておウチに帰るンゴ! 明日も学校なんだペポ?」


「あっ! そうだったぁ〜! 早く帰って寝ないと遅刻しちゃうよぉ〜!」



 語尾統一しろよ。


 ってあの生き物、魔法少女によくあるマスコットキャラクターだよな? ニワトリっぽい? 空飛んでるけど。デフォルメされてなんか可愛い感じはするけども。

 ってか成人向けの撮影じゃなかったのか。学校って言ってたもんな。つまりこの辺の小学生の女の子? 残念だ。非常に残念だ。

 それにしても……現実味がないな。やっぱりこれは夢なのか? いや、夢なんだろうな。うん。きっとそうだ。そう思い込もうとしてたのに……。



「フォームアウト!」



 そんな声と共に魔法少女の体を優しい光が包み込み、その光と共に体が成長したかのように大きくなると光は消えた。



「ふうっ…………あっ! 失敗しちゃった! あのまま空飛んで帰って、家の近くで変身解けばよかったじゃ〜ん!」


「コココッ! メイはドジだなぁ〜!」


「もうっ! 自分でもわかってるんだから言わないでよっ!」



 コココッ!ってやっぱりニワトリかよ!

 ってそこじゃない。そんなことよりもとんでもなく重要なことがある。

 光が消えてそこに立っていた人物。それは──



「望月……なのか?」


「っ!?」



 俺のクラスの委員長。望月 芽衣だった。





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