第10話 飛田 爽 1

 昼休み直前の授業、飛行授業で飛田の誘い通り組むことになった。それは全然、全く問題がなかったんだけど、さっきから蓮の圧がすごいのだ。


「……」


 断ったのがいけなかったのかな。でも蓮からペアの申し込みがあるなんて思わなかったんだ。好感度が上がっているとはいえ、口調はぶっきらぼうで笑顔の一つも見せてもらえないから、正直好かれている気が全くしないのだ。

 だからペアの誘いがあるなんて思うわけない。もし、俺が誘うとなったらゴミを見る目で見られそうだ。


「本郷めちゃくちゃ怒ってる。まぁ、仕方ないよね」

「……飛田はなんで蓮が怒ってるのか分かるのか?」

「分かるけど……真琴は分かんないの?」


 分かってたらさっさと謝ってあの圧をさっさとどうにかしてもらってる。念の為確認した好感度は下がってなかったけど、できればあれをどうにかしたい。


「んー分かんないからさ、なんで怒ってるのか心当たりあるなら教えてくれない?」

「なんで?」

「さっき取り敢えず謝ってみたら蓮にさ、『僕がなんで怒ってるのか分かってからにして』って言われてアレなんだよ」

「なるほど」

「マジで分かんねーし、このままだと部屋で凄く気まずくなるから、理由が分かるなら教えてくれ!頼む!」


 手を合わせて願う。今は下がってないからいいけど、このまま拗れて死亡フラグまっしぐらは嫌だ。知ってるか飛田、乙女ゲーの攻略対象は結構めんどくさいんだぞ!訳わかんないことで怒って好感度が一気に下がるんだぞ!可愛い子にちょっと冷たくされたからって嫌いになるなよめんどくせぇな!

 プレイしていた時の気持ちが湧いてきたので、必死になって願っていると折れてくれた。


「わ、分かったよ。教えるからそこまでしないでよ」

「ありがとう飛田!で、蓮はなんで怒ってるんだ?」

「……怒ってる理由は真琴が考えないといけないだようから言わない。だから解決策だけ教えてあげる」

「あ、うん……」


 飛田に言われてハッとした。なんで怒ってるのかは、俺が考えないといけないことだ。ゲームのキャラだからって考えで、蔑ろにしてはいけない。

 今、俺が話している飛田だって、ちゃんと心がある人間なんだから。


「ちゃんと分かったみたいだから教えてあげる。本郷は次の約束をして欲しいんだと思うよ」

「次?」

「なんの約束か分かるよね」

「あー……うん、なんとなく分かった。じゃあ早速蓮のところに……」


 拗れる前に直した方がいいと思い蓮のところに行こうとすると、タイミング悪く教師が号令をかけた。

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