ストーリー101~103

ストーリー101:カウルの刻印


登場人物

ラムル、バンズ、ポートル、カウル



 バンズのドック内メインルームに入って来たラムルとカウル。


 バンズ「ごめんねー呼び出しちゃって。」


 いつものようにラムルの側にシートが寄るとラムルが座った。


 カウルはラムルの横で待機モードになる。


 バンズ「カウル、そんなによそよそしくしないでいいんだよ。ここに来たら……ほら、あそこにフライやピコが待機してるだろ?まず側に行って同期するんだよ。ジャンもやってるんだ、カウルもそうしていいよ。同期終わったら皆んなでそこに待機すればいい。」

カウル「了解です、そうします。バン、ありがとう。」

バンズ「うんうん、バンって呼んでくれた。ありがとカウル。……さ、ピコ達のところへ行って構わないよ。」


 カウルはピコとフライが待機してる横に。同期している画。


 ポートル「バンズはAnn達にだけは優しいんだよなぁ。」

バンズ「ポートルには厳しい位がちょうどいいの!」

ラムル「で、バンズ。確認って何?カウルの何を確認したい訳?」


 ピクがラムルにも飲み物を用意する画。ラムルの前にカップが乗せられる。


 ディゾルプ。


 幼い頃のバンズと、博士と呼ばれる前の歳のロワート=グロビアの回想画のシーン。


 バンズ「じいちゃん、今日は何をしてるの?」

ロワート「これかい?依頼された部品が出来上がったんで仕上げてるのさ。」

バンズ「じいちゃんのお仕事なの?」

ロワート「そうだよ。船やフローター、Annのカスタマイズさ。……さてこれで終わり。」


 ロワートは、部品の仕上げが終わったらしく、その部品に刻印を打って箱に収めた。(刻印の画、入れる)


 ロワート「バンズ、留守番頼む。これを届けたら直ぐ戻るから。」

バンズ「はい、じいちゃん、いってらっしゃーい。」


 ロワートが箱を抱え出て行く画。


 回想終わりディゾルプ。


 バンズ「カウルのカスタマイズをじいちゃんが手掛けたって言ってたから、ちょっと確認したくてさ。」

ラムル「この間変形まで見てもらったけど?他に何か?」

バンズ「うん、また変形を頼んでくれない?」

ラムル「いいわ。……カウル、ちょっとここへ。」


 ピコやフライと並んで待機モードのカウルが近づいて来る画


 ラムルoff「ストップ、カウル。お願い、そこで変形して。」

カウル「了解、ラムル様。」


 変形するカウルの画。

カウル「ラムル様、他に何かご用でしょうか?」

ラムル「少しの間じっとしてて。バンズにあなたのパーツを見せてもらうわ。」

カウル「分かりました。では、バン。お願いします。」

バンズ「……ねぇカウル、あなたをカスタマイズをしたのはアタイのじいちゃんなんだ。アタイの名前はバンズ=グロビア。同じファミリーネームだろ?気が付かなかったかな?」

カウル「いえ、同じファミリーネームでメモリー出来ています。しかし尋ねる事は私には出来ませんので。」

バンズ「そっか。で、カウル。腕や脚、もう少し見せてねー。」


 変形したカウルをあちこち見てるバンズ。


 バンズ「ねぇカウル。あなたはこの変形した自分の姿、見たことあるの?」

カウル「ええ、最初の変形テストの時。ロワート博士に鏡の前に立つように言われて。」

バンズ「それで自分を見て、カウルはどこがお気に入りなの?」


 ディゾルプ。


 回想。

 鏡の前のカウル。横には作業着姿のロワート。


 ロワート「カウル、自分を見た感想は?」

カウル「いいカスタマイズです。グロビアさん。」

ロワート「カウル、どこが気に入った?」

カウル「両腕のプレートが気に入りました。」

ロワート「そうかそうか。その部分ではレーザーをけられる。身を守るんだ。」

カウル「でもノアーナでは武器を振るう者など居ないのでは?」

ロワート「何か有った時の為に身を守れる様にとブロントの注文だよカウル。気にするな。……で、その両腕がお気に入りなんだな?」

カウル「ええ、グロビアさん。感謝します。」

ロワート「じゃあ両腕を前に。少しじっとしててくれないか。」


カウルの両腕のプレートの裏側にロワートの刻印が打たれた。


 回想終わり、ディゾルプ。


 しばらく無言になっているカウル。


 カウルは両腕を前に出し、

カウル「この両腕のプレートが気に入っています。」

バンズ「そか。じゃあその状態で少しじっとしてて。」


 言うとバンズはカウルの両腕のプレートを見回した。


 バンズ「有った!……ラムル、ポートル。ちょっと見て。……ごめんねカウル。もう少し待ってね。」

ポートル「刻印が有るね。」

ラムル「ほんと。」


 カウルの腕のプレートの裏側にはロワート博士の刻印の画。


 バンズoff「カウル、ありがとう。少し触らせてね。」


 バンズは手触りで刻印を確かめた。


 バンズ「カウル、腕を下ろして。もう確認は終わったから、元に戻ってもいいよ。」

ラムル「カウル、見せてもらって感謝するわ。元に変形してまた待機モードね。」


 ピクのテーブルに戻る3人、奥で待機モードになるカウル。


 バンズ「……カウルの刻印が確認したくてさ……じいちゃんの……。」


 バンズは柄にもなく泣いている。


 ポートル「バンズ、どうしたの?らしくないよ。」

バンズ「カウルの刻印見たら、じいちゃん思い出しちゃってさ。」


 目を拭うバンズ。


 ラムル「あの刻印が博士の刻印なのね。」

バンズ「じいちゃんは依頼されたパーツを仕上げる時、必ず打ちつけて終わりにしてたんだ。幼いアタイは何をしてるのか分からなかった。……ビブレスでじいちゃんの名前が知られる様になった頃、噂で刻印の話が広まった。それをつい最近知ったんだ。……じいちゃんが誰のどんな依頼のパーツを手掛けたか分からないから刻印を見たことがなくてさ。」

ラムル「それでカウルのカスタマイズの確認がしたかったんだ。」

ポートル「刻印見られて良かったじゃんバンズ。」

バンズ「カウルのおかげだよ。ラムルもありがと。」

ラムル「あーそうそう。忘れるとこだった。……ねぇカウル、度々ごめん。ちょと横に来て。」


 カウルはラムルの横にやって来た。


 ラムル「預けてある板を出して。」


 カウルは分析トレーを出した。

 ラムルは板を取り出すと、

ラムル「ダイム金属の板、カウルに分析してもらったんだけど、カウルは私達が調べたところまでは知ってたの。で、この板はザクラート含有率0.001%って分かったわ。でも他のデータは無いんだって」言うとカウルのトレーに戻す。


 ラムル「カウル、ありがとう。待機でいいわ。……カウルのデータからザクラートの組成データが手に入ったから、あとは精製方法とか知りたいわね。含有率は0.001%が通常配合のようなの。」

バンズ「そうかー。結局そこに行き着くわけだね。」

ポートル「もしかして鍛造とか鋳造って話―?」

バンズ「それも有るけど、アタイはザクラートだけを取り出す方法が知りたいな。」

ポートル「ややこしい話は抜きでお願い。お腹空くから。」

ラムル「近いうちに母とエンジャーに行くから、その時にガルシアさんに来てもらっちゃう?」

バンズ「それ良いね!ガルシアさん、ドックが見たいって言ってたからいいタイミング。……それまでに地球のお土産、解析にかけなきゃ。」

ラムル「OK。ガルシアさんに来てもらうように頼んでみるね。」

ポートル「バーベキューの支度もしなきゃ。」


 ディゾルプ。



ストーリー102:フライの為のお出掛け


登場人物

ポートル、フライ



 ある日の事。早々にフローターに準備をし、フライを乗せ飛び立ったポートル達。


 ポートル「ねぇフライ?データに無いものがあなたには多過ぎると思うの。」

フライ「そうでしょうか。私はピコやジャン、新たにカウルとまで同期を重ねています。既に記憶量は多いと思いますが……。」

ポートル「私、しばらくあなたを家に待機させるばかりだったでしょ?だから今日はあなたに新しいデータを残そうと思って。」

フライ「それでフローターで出掛けている訳ですか。」

ポートル「そうよ。行き先はブラッダ=ガルって都市。人口は少ないけど良いところよ。そこから少し離れた郊外まで行くの。」

フライ「航行軌道もメモリーしてます。到着したら何かの調査ですか?それとも資料採取でしょうか?」

ポートル「違うわ。私とあなただけの記憶にしておいてね。」

フライ「分かりました、ポートル様。」


 コクピットからの外の風景が流れて行く。


 ポートル「まもなく到着。着陸するから位置はメモリーしてね。」


 駐機場に着陸したそこは墓地。ポートルの両親が眠っている。


 歩いて行くポートルとフライ

周りの墓跡はどれも同じ形、名前だけが刻まれている。


 ポートルは腕のモニターで位置確認。


 ポートル「さあ着いたわフライ。一緒に並んで。」


 墓跡前のポートルとフライの後ろ姿。


 ポートルoff「私の両親の墓石よ。2人は私が小さい頃に亡くなったの。両親の生まれ育った地。だからここを選んだ訳。あなたは父が託してくれた、私にとっては形見だった。だからいつも部屋に置いていたの。でもあなたはたくさんのメモリーがある。色々連れ出して記憶してもらわなきゃいけなかったのに……ごめんねフライ。」

フライ「私はあるじの行動に従うようシステムが組まれているので、ポートル様の行動は理解出来ています。」

ポートル「家にはドックが無いから、父から譲り受けたマーデクトはバンズのドック。家にはフローターが着陸出来るスペースが精一杯。もっと早くからあなたと行動するべきだったわ。」

フライ「ポートル様、過去のデータはカテゴリーを問わず記憶されています。お気になさらずに。」

ポートル「ありがとう、フライ。優しいわね。……あぁ、あなたのメンテナンスもカスタマイズも多少は出来るから、遠慮なく話してね。出来る限りはするわ。」

フライ「はい、その様にします。」


 しばらく黙っていたフライ、

フライ「ポートル様のメモリーはどのくらいなのでしょう?」

ポートル「へ?」


 ストーリー67の回想。バンズがフライのメモリー拡張をしていた時の事……


 バンズ「……フライ?ポートルの前のあるじのデータは残ってるの?あなたはなんだか年代物のAnnみたい。」


 フライ、データを探しているのか少し沈黙。


 フライ「残っていません。ポートル様から聞いたデータでは、ポートル様の父が前のあるじ。ポートル様にあるじを変更する時、メモリー系統は全て交換したと言っていました。」

バンズ「思い出はポートルの心の中だけかー……。」

フライ「バン、その思い出とはなんでしょうか?大切ですか?」

バンズ「……思い出はアタイ達のメモリーボードみたいなもんなんだ。……でもさ、フライ達みたいに容量が無いんだよ。……容量が……少なくてね。……自動的に上書きされたりしてさ……忘れちゃう事もあるんだー……。」


 シートの上で膝を抱えて話してくれたバンズ。


 回想終わり。


 フライ「私のメモリー拡張をしてくれていた時に、バンが話していたのですが。」

ポートル「バンズから何か言われちゃったの?」

フライ「バンに思い出とは何かと伺いました。バンは、思い出はメモリーボードみたいなものだと。……私達の様にメモリー容量が無いんだと。容量が少なくて……上書きされたり忘れてしまう事も有るとか。」

ポートル「……そうね。バンズの言う通りよ。私達のメモリーボードは容量が少なくて、すぐに忘れてしまうの。……だから、だから忘れたくない事は繰り返しておかないと消えてしまう。今日も同じよ。両親を忘れたくないから……。」

フライ「繰り返す周期をメモリーしますので指示を。」

ポートル「それはいいわ。定期的にじゃないから。……私が忘れそうになったら教えてくれればそれで良いのよフライ。……さ、行きましょ、墓石の位置情報もメモリーしてね。」

フライ「了解です、ポートル様。」


 画面手前に歩いて来るポートルとフライ。


 ポートル「さて次はどこへ行こうかしら。」


 Fade-out。



ストーリー103:太陽黒点の異常


登場人物

VCチームリーダー、VCサブリーダー研究員A、VCサブリーダー研究員B



 VC研究員A「最近、送られてきた太陽観測探査機のデータですが、大きな黒点が出たり消えたりしてます。」

VC研究員B「リーダー。回数も過去にない回数です。」

チームリーダー「太陽の黒点は大昔から増えたり減ったりしている。何の問題がある。」

研究員A「大きさと回数です。」

研究員B「最近になって異常な位の数値です。詳しく調べた方が……。静止軌道の宇宙望遠鏡を向けて調査したらいかがかと。」

チームリーダー「分かった。地球の自転とのタイミングを合わせて観測の指示を許可する。関係者に協力を要請。太陽のデータが来たら特定位置を確認。集中観測を。」

サブ2人「了解しました。直ちに取り掛かります。」


 ディゾルプ。

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