ストーリー15~17

ストーリー15:ブロント、ルイスに託す


登場人物

ブロント、ルイス、カウル



 ブロントが水の惑星は諦めるようラムルに話してから数日後。


 カーレイ邸リビング、ブロントとルイスはティータイムの様子。


 ブロント「ルイス、地下の部屋へ一緒に来てくれないか。」

ルイス「ブロント。それはまた急ですわね、……いったい何かあったのですか?」

ブロント「あぁ、ラムルに……見せようと思う。」

ルイス「ラムルに地下を⁉︎……いいんですか?ラムルは女の子ですよ。あの時は男になら告げても良いと仰ってたのに……。」

ブロント「いや構わん。ラムルにならと感じたのだからそれで良い。……だから頼む。」


 カーレイ邸地下の何やらたいそうな所へ足を向ける2人の画。


 階段を降り、その地下室の大きな扉の前、左右の横にはパネルが2枚ぼんやり光っている画。


 まずブロントが手をかざした。

ブロント「さあルイス、あなたの手も。」

続いてルイスが手をかざす。


 重々しく扉が開く画。


 ブロント「私だ。戻ったぞ。」

ブロントの声に反応し照明が点く。


 扉の中、若かりし頃のブロントに従えていたAnn、カウルの姿や、複数の計器類、大きなトランクが幾つか見えている。電源がoffの為、全てが静かに眠っているようだ。


 ルイス「ブロント。ラムルにこれを?」

ブロント「そうしようと思う。但しデータは消去しておく。」


 ブロント「サブ電源On。」


 一部の計器類に電源が入る画まで。

カウルや大きなトランクなどが照明に照らされた。


 2人が婚姻以前、ブロントが宇宙船やデータ管理に使用していた管制室である。


 ルイス「全てのノアーナ人に不要だからとここへ収めたはずではなかったの?ここのデータはノアーナにとって不利益ではないのですか?」

ブロント「分かっている。分かっているからこそだ。ラムルもカーレイの血を受け継ぐ者。私やルイスの亡き後でもラムルが困らぬよう伝えておかねばと思う。」


 遠くを見つめるようなブロント、

ブロント「ラムルは私に似て好奇心旺盛。他はルイス、君に似ているよ。芯のある娘に成長している。」


 ブロント、ルイスに向かい、

ブロント「君からここを見せてやってくれ。外の扉はこれからは君だけでロックしておいて欲しい。」

ルイス「いいのね?ブロント。過去を伝えても……。」

ブロント「ラムルは水の惑星ほしを調べたようだ。私のRJ行動は伝えたが、腑に落ちんらしい。もし水の惑星ほしに足を向けでもして何か有ったら取り返しが付かなくなる。ここで全てを知って、その後ラムルはどうするか……。それにより判断しよう。」

ルイス「ラムルの事が心配なのね……。分かったわ、ブロント。時期を見計らってラムルを連れてくる。扉のロックは今後私のみで施錠します。」

ブロント「ラムルに託す時にデータは私の手で消去する。それは頭に入れておいてくれ。……あとは頼む、ルイス。」


 ハグする2人。消灯して出て行く、扉が閉まるところまでの画。


 ディゾルプ。



ストーリー16:RJの真相


登場人物

ラムル、ブロント、リグール=カーレイ、メグ=ローノーラ、メグの子供、G15総司令官、スカーレット=ジョリー、ジャン



 ブロントとルイスで地下へ降りる前の時節。

カーレイ家のダイニング。ラムルは父ブロントと向かい合いソファーに座っている。

ラムル「父上、私、惑星探査で偶然水の惑星ほしを発見、そのあと詳しく調査をしました。」

ブロント長官「な、何だと!……ラムル、私は他の惑星を探せと言ったはずだが?。……しかも水の惑星ほしを発見出来たと言うのは本当なのか⁉︎」

ラムル「はい偶然見つけました。……そのあと、過去の経歴から今まで、全て調べました。」


 長官、ラムルの次の言葉を待っている様子。


 ラムル「父上のRJは2度目……だったのですね。……禁じられている2度目のRJ計画、何故そうしたのですか?父上は2度目と知っての行動だったのですか?」


 精一杯振り絞って話しているのか声が少し震えている。


 ブロントは無言のままだ。


 ラムル「1度目のRJ、随分昔に行われた様ですが、以来代々に渡ってカーレイ家が検索を続けてきたのは何故ですか?私にはRJは終わったからと言っていたのに……。」

ブロント「ラムル、どこまで調べた?」ブロントはようやく口を開いた。


 ラムル「最初のRJの実行から、父上の2回目のRJまで。」

ブロント「……ラムルよ、お前もカーレイ家の血筋。このまま隠しておくのも良くないだろう。……1度目のRJ計画の話から教えよう。但し、今日を以って水の惑星ほしに関して触れない事を約束しなさい。さもなければ、カーラントで宇宙そらへ出る事を禁ぜねばならない。」

ラムル「話の内容次第では承諾し兼ねます。」

ブロント「良かろう。」


 ブロントは遠くを見つめる様な姿勢で語り始めた。


 1回目のRJ計画の回想の画に流れるブロント長官のoff。

ブロントoff「そもそもRJ計画は継承行動と呼ばれていた。RJと名称が変わったきっかけが、カーレイ家先祖の水の惑星ほしの出来事だ。カーレイ家先祖はRJの為に水の惑星ほしを見つけた。当時から青く豊かな水を湛えた惑星だったそうだ。そして1回目のRJ計画の実行、当時はまだ継承行動と言っていたがね。そしてその行動の主、その名はリグール=カーレイ。」


 2人がソファーに座っている画に変わる。


 ラムル心の声(off) 「⁉︎リグール?英雄リグール=ジュードと同じ名……。」

 身を乗り出すラムル。

ブロント「まあ聞きなさい。」


 続けて回想、別画面。


 ブロントoff「彼は長い年月を水の惑星ほしで過ごしたそうだ。そこで知り合った水の惑星人がいた。その名はメグ=ローノーラ、物理学者、女性だ。リグールは素性を隠していたが長く接するうち、お互いが打ち解けて全てメグに伝えた。メグは何も驚かなかったらしい。リグールは現地に出来る限りの技術力を残す準備をしてきた。そして、やがて去る時がやってきたらしい。メグは2人の間に子供を授かりたいと願った。リグールは躊躇とまどったが、メグの為にと応じた。異星の者同士、どんな子供が誕生するか、それだけが気掛かりなままに水の惑星ほしを去ったのだ。授かった子供は特殊な能力を持つ特異な人物だった。成人したその者は、独自に宇宙船を作り上げ水の惑星ほしを出ていった。長く移動し、どこかの高度な文明の惑星ほしに降り立ったのだろう。その人物こそが今でもノアーナを脅かしているG15の総司令官だ。高度文明の惑星の技術で自立惑星を持った。彼は永遠と言っても過言ではない寿命を持ち、研ぎ澄まされた感覚はリターナ人やノアーナ人には脅威となった。それを知り、嘆いたリグールはノアーナをあとにし、リターナに移り住みリグール=ジュードと改名して身分を隠して過ごしていた。リターナの戦闘軍人となったが、やがて決意しG15の戦役を実行する責任者となった。その結果はお前達が学んできた通り、G15によってリターナは壊滅された。もちろんリグールはそこで命を落としたのだ。……ただ、その戦役のおかげでノアーナは難を逃れた。そしてリグールを英雄と讃えた。その後、継承行動は彼を讃え、リグール=ジュードの名を取り、RJ 計画と呼ぶ様になったのだ。カーレイ家継承者は、リグールが向かった水の惑星ほしが気掛かりだった。もしG15同様の惑星と化すならば、ノアーナとしては水の惑星ほしを残す訳にはいかない。それをカーレイ家が代々管理してきた、と言う訳だ。」


 黙ってブロントの話に耳を傾けていたラムルだったが、口を開く。


 ラムル「リグール=ジュードはカーレイ家からの改名だったのですね。……父上は過去の水の惑星ほしを知っていて2度目のRJに向かった……それは何故ですか?」

ブロント「きっかけは私もお前と一緒だ。調べてみて、自分でも向かわなければ何も解決しないのではと感じた。興味もあったがね。そして若い頃の私は決心しRJの実行と偽り、幾度となく水の惑星ほしに向かったのだ。これはまだルイスと出会う前の話だ。」


 ラムルは少し怪訝けげんな表情。母の部屋の方を見る。


 ブロント「大丈夫。この事はルイスに出会って間もなく伝えてある。」


 そしてまた別の回想画面と長官のoff。


 ブロントoff「私はステルスを掛けた状態で暫く水の惑星ほしに滞在した。……ところが、ある日、私のミスで、自分にステルスを掛けずに船を出て行動していた。そこで私を発見した者がいたのだ。名はスカーレット=ジョリー、女性科学者だった。」


 一部回想シーン。

 スカーレット「私はスカーレット=ジョリー。ここの住人です。あなたは?」


 当然ながら、スカーレットにはブロントが全て見えている。

続けてスカーレット「あなたはこの星の言葉をご存知のようですが、今の私の言葉を理解出来ますか?」


 レーザー銃を向けるブロント。


 ブロントoff「姿を見られてしまった以上生かしておく訳にはいかないな……。」


口を開くブロント、「私の姿を見られてしまった。あなたをこのまま生かしておく訳にはいかない。」

スカーレット「や、やめてください!私は何もしません、約束します!だから武器をしまって!」


 あっけに取られるブロント。……しばらくして武器を下ろす。


 スカーレット「あなたの事を口外するつもりはありません。あなたはここ地球の人ではなさそう。いったい、この地球に何をしに来たのですか?こんな何も無い所へ。」


 ブロント無言のまま聞いている。


 スカーレットは続けて、

「黙っていて結構です。今、私の見る限り、あなたはこの地球の文明より遥かに進んだ文明を持つ方とお見受けしました。あぁ、とても羨ましいわ。……実は私は、ここで文明を勉強しているので何となく分かります。私達もいずれは優れた文明人になり得る事を。私は未来の為の技術も勉強しています。でも、今の地球では、あなたの様な技術力を持てるのは何世代も先の未来でしょう…。」


 途中から寂しげに語る様になるスカーレット。無言のまま言語解析を聞き入るブロント。


 スカーレットは更に続けて、

「私達にはまだまだ技術が足りない、他所の星と交流する事が出来ない。分かっているのだけれど……。私の様な名もない科学者が何を言っても聞き入る者は居ないのです。……残念ですが、他所の星の生命体と会話すら出来ない私には、全く交流も出来ません。」


 とても残念そうな表情のスカーレット、薄っすら涙を浮かべてさえいる。


 スカーレット「私達はこの地球で子孫を残しながら歴史を作って来ました。それでもいずれこの惑星ほしは消滅するのです。文明の進化が必要なのに、私達はこの星の中だけで一向に争いを辞めません。悲しい事です。」


 回想リピ終わり


 ブロントoffからonへ「長く滞在して打ち解けた私達だった。スカーレットは私との間に子供を望んだ。互いの遺伝子構造からそれは可能だった。行為に及んだが子供が産まれたかは分からない。私はそれきり水の惑星ほしを去った。今までに分かるのは水の惑星ほしが変わらず青く見えている事だけだった。RJデータの履歴は私が気掛かりにして閲覧していた、それだけだ。既にスカーレットは他界し、もう2代程時が経つ。G15の様な惑星にならなければそれで良いのだ。……頼む、ラムル。水の惑星ほしの事はもう触れるでない。」


 ラムル、独り言の様に「もしかしたら私と同じ遺伝子を持つ人物が水の惑星ほしに存在する可能性も……。」

ブロント「触れる必要は無い。もう済んだ事。何事も無ければそれで良い。」

ラムル「父上の話は分かります。ですが私もカーレイ家の血筋、何事も起こらなかった事を見届けたいです。」

ブロント「ラムル、もう宇宙そらへ出るな。別の惑星に目を向けなさい。さもなければ私はカーラントを飛べなくする事になる。」


 やはりそう来たかと言わんばかりのラムル。


 ラムル「今後父上はそうされるのですね。……分かりました父上。仰せの通りで構いません。」


 ラムル、ジャンを近くに抱き寄せる。


 うっすらと涙さえ浮かべているラムル。


 ブロント「ラムル、わがままを言わないでおくれ。私も辛かった。ここまでにしておきたいのだ。」

ラムル「……美しい青き惑星ほしでした。とても素敵な惑星ほしでした。……私も、水の惑星ほしが悪い方向へ発展していない事を望んでいます父上。……。」


 その後は何も語らず、ジャンを連れてカーレイ邸を出て行く画。


 無言でいるブロント。


 ディゾルプから宇宙船カーラントの駐機ドックへ。


 外部制御テーブルと思しき機器の前のブロント。


 制御のロックを掛けてしまう画。


 BGカーラントでブロントoff「ラムルよ、すまんが暫く行動は控えてもらう。私のわがままかも知れんな、許せ。」


 ドック内消灯の画。



ストーリー17:地下へ招く


登場人物

ブロント、ルイス、ラムル、カウル



 ブロントとルイスが、地下へ降りた日から数日後。


 カーレイ邸リビング。ソファーでお茶中のブロントとルイス。


 ブロント「ルイス、そろそろラムルに話してくれないか。カーラントの制御をロックして数日経つ。ラムルが無茶を起こさない内に……頼む。」

ルイス「分かってます。……私はてっきり男の子になら直ぐにでも伝えるものと思ってましたけど。まさか女の子のラムルでよろしいとは……。」

ブロント「いや、ルイスに似て優れた女の子に育ってくれた。私はそれで良いと信じているよ。」

ルイス「私に似て?……ということはノアーナ1のおてんば娘ですわ。」


 微笑み合う2人。


 ルイス「ラムルは今日は学術部へ講義。そろそろ戻る頃ですよ。」


 場面転換、ラムルのフローター前。


 通信しながら乗り込むラムル。


 ラムル「分かりました母上。(ルイスoff「講義は終わったの?」)……うん、ちょうどフローターに乗ったところよ。……良かった。バンズのドックに行こうと思ってたところなので。(ルイスoff「待ってるわラムル。」)……はい。じゃ、戻ります……。」


 飛び立つラムルのフローターの画。ディゾルプ


 再びカーレイ邸リビング。


 2人の会話の最中、ようやく呼び出したラムルがやってきた。


 ルイス「おかえりラムル。今日の学術部の講義はどう?順調に進んでるの?ラムル。」

ラムル「ええ、母上。学術部では、過去から未来までノアーナの全てを伝えているわ。」

ブロント「ラムル、戻ってきて直ぐですまないが、今日は大切な話がある。ルイスについて地下の部屋へ行きなさい。」

ラムル「地下⁉︎そんな所がここにあるの?」

ルイス「ええ、ラムル。……さ、行きましょう。」


 行きましょうって…と言いたげなラムル、ルイスと地下へ向かう2人の画。階段を降りて地下へと辿る画。(階段は螺旋?)


 そして地下室の大きな扉の前へ来た2人。


 ラムル「すごい。こんな所が有ったなんて。」


 左右の横にはパネルがそれぞれ有るが、その片方だけがぼんやり光っている。それをルイスが操作する画。


 ラムル「随分古めかしい……。母上、ここはいつ頃からの部屋なのですか?」

ルイス「そうね、私とブロントが婚姻する前から、婚姻して少し後までかしらね。」


 扉の施錠が解ける音と画。


 ラムル「母上にしか開けられなかったのですか?」

ルイス「いいえ、元々はブロントと2人で開錠する扉だったわ。でも今は私だけで開けられるのよ。さ、入りましょ。」


 重々しく開く扉、2人の背後からの画。


 ラムル「へー以外と広そう。」

ルイス「そうね、十分な設備が有れば立派なんだけど。この通り、もうここは物置よ。」いたずらに微笑むルイス。


 ラムル「母上、父上の言っていた話とは何ですか?」

ルイス「水の惑星ほしの話は聞いたわね。その補足。」


 何やらルイスは昔を思い出してか嬉しそうだ。


 ブロントなら音声認識だがルイスは手動での操作。照明を点けながら、

ルイス「そこをご覧ラムル。」


 ラムル「これは⁉︎……Annなの?何て立派……。これは……もう機能してないの?」

ルイス「そうね、あの時以来。……ブロントが水の惑星ほしから帰還して間もなくかしらね。ブロントは自分の兄弟のように慕っていたようなの。とてもAnnを大切にしていたから。……でも当時のブロントは、Annに残っているデータを消去出来なかった。ここの全てのデータを消去していないのよ。残せば今後のノアーナやRJ計画に差し支えるのに……それが出来なかったのね。大切なAnnだったから……。」

ラムル「父上も……Annを慕っていたんだね。」

ルイス「名前はカウル。私も紹介されたわ。私のデータも入っているわきっと。このカウル、本当はあなたに従わせたかったのかも知れない。でもブロントの行った水の惑星ほしのデータを残したままだったから……それも出来なかった。」

ラムル「消去出来なかったんだ……父上……。」

ルイス「それにね、ここの設備も全てデータが残してあるの。だからブロントは設備もカウルも全て封印しなければならなかった。その当時のブロントは管理部へ昇進が決まっていて、ここが知られては昇進も無くなるしカーレイ家代々も詮索される。」


 しばらく沈黙の2人だったが、ラムルが口を開く。


 ラムル「2度目のRJ、他に知られては困る事もあったんですね。」

ルイス「……ええ、そうね。……ラムル、座って話しましょうか。」


 2人は近くのシートに腰を下ろした。

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