1話 はじめまして

早朝。こんな時間に起きるのはもはやルーティーンとかしている。5月12日。普通の学生なら仲良しなグループを確立し、クラスに馴染み始めているからだろう。こんな時期に転校してくるやつはほとんどいない。しかしそのほとんどに入ってしまうとはなにがあるかわからないものだ。昔、入学式には全部出ると言っていたのに、今や入学式はおろか、修了式にも出ていない。目覚め最悪である。悪態つきながら愛車のバンの鏡を見ながら整える。意外と高校のレベルは高く、そのかわりに制服はおしゃれでいい感じだ。最低でも6ヶ月は過ごすので嬉しい限りだ。しかし、顔はインキャを体現しているような身なり。黒縁メガネで髪は下ろしており、ザ、目立たないである。さて、行くか。持っていくものを確認する。武器一式、破片手榴弾等々。それを隠しながらいく。


“制服姿が見れなくて残念。あっ、一通りのクラスメイトの情報は送ってあるから、見ながらいってね。助けて欲しくなったらいうんだよ。じゃあ、いってらっしゃい。”


「お前は母親か?サポートよろしく。てか、一応保護対象とは接触しとくべきかな。愛車の方は学校の近くに。見えないようにしといてね。」


“了。”


さて、降りたはいいが保護対象はと、いた。


いや見た目ギャルやんけ。きっつ。無理無理無理無理。はぁー?だるそー。裏からサポートする感じでいいかな。まずは無害な感じでいこう。


「あのー。すいません学校ってどこら辺ですか?」


「えっ?あ、えっと転校生かそんな感じですか?見たことない顔ですし。」


ハスキーボイスだな。透き通っている。赤みがかったゆるいウェーブのかけられた髪は艶があり、手入れが行き届いている証拠だろう。容姿は上の上ら辺かな。


「はい。今日転校してきて。まだここら辺の地形は理解できていないので。教えてもらうだけでもありがたいです。」


にこやかな笑顔を心がける。営業スマイルだ。社会に出たら必要になるぞ。覚えておこう。


「あ、なら、一緒にいきましょうか?時間に余裕はありますし。ここら辺のことを教えますよ。」


「でも、噂になったら困るんじゃないですか?」


そういうと、彼女は年相応の可愛い笑顔で大笑いしていた。


「大丈夫だよ。優しさだから。ふふっ、あー面白い。私、那原菫よろしくね。」


彼女は俺の横に並んで先導するように手を引いていく。前情報にあった通り、性格面は問題ないらしい。そして彼女に手を引かれながら学校に近づいていく。ここが少しの間職場のようなものになるだろう。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


[???視点]


「お嬢様。この前の件の人物に該当するものを見つけました。容姿は変えているようですが、記載にあった通り、腰元にハンドガンを見えないように持っています。」


『わかったわ。引き続き見張りをよろしく。』


「了解しました。」


依頼は二つある。片方は楽そうだが、もう片方は厄介ごとかもしれない。

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