はい男子です!女子校です!

物書きの隠れ家

オープニングなのです!

 これはそう遠くない未来の話。性の多様化が進んだこの世界では、LGBTなんて言葉はありはせず、その人の性別はその人自身が選ぶのが当たり前となっている。つまり、女装は女であり、男装は男である。戸籍上性別が違えども、その人が主張する性別こそが真の性別であり、それこそが差別のない素晴らしい世界の枠組みなのである。


 しかも技術の発展に伴い、髪を切る感覚で顔を変えることが可能になり、洋服を選ぶ感覚で性別を転換させることが出来るようになった。声も変声機を使えば少年探偵顔負けの変身ぶりであり、名前もあだ名のように語っていいのでその気になれば誰が見ても性別など区別はつかないだろう。


 つまり、仮に女子校に男子がいてもなんらおかしくはないのである。


 だがしかし! どんなに時が経とうとも性欲にまみれた男は数多く存在し、そんな男どもが悪事を働かないわけもない! 例えば、男子禁制の女子高校に、女と交流を図るために自分を偽って入学する男子が沢山いる!


 そんな問題を解決するために天如あまじょ学園はひとつの方法を取った。それが、その男子達だけを集めたクラスを作ること! もちのろん、生徒本人にはこのことは伝えずにである。


 だがひとつだけ問題があった。それは性の保護化のためにその人の性の情報は詳しくは知ることが出来ない点である。ある程度、過去の経歴を調べ尽くそうと思えばその人の性を大まかではあるが調べることは出来る。だがどうしても、それは正確とはいいがたかった。


 この物語に出てくる誉高ほまれだか加奈かなはこの天如学園の新入生、1年4組。


 このクラスの唯一の女子である。


 「ってなんですとぉおおおおおお!」


 遠くで先生の叫び声が聞こえる。


 「あの子本当に女の子なんですか! で、でももうクラス発表はしちゃいましたよ!」


 「いい? ぜえっっっったいに! あの子にばれないように」


 「ただでさえ男だけクラスは女子校としてはかなりグレーなんです、一人だけ女子を囲んだクラスなんて相当やばいですよ」


 「いえ、世間体はどうとでもなるわ。問題はあの子自身よ」


 「そうですよ! BL展開に女子は要りません!」


 「……えーと、青木先生? 君確かあのクラスの担任だよね。本当にこのこと理解しているのかな?」


 「はい校長! もちろんですとも! そもそも男子だけのクラスがあること自体生徒たちにばれるわけにはいきません!」


 「そう、その通りです」


 「ばれたらクラス恋愛しなくなるじゃないですか!」


 「本当にわかってるの!?」


 「わかってますとも!」


 職員室に不安が漂う中、チャイムが鳴りだす。


 「では行ってきます!」


 元気に走り出す一人の教師を目に、残りの皆は「まって!」と心の中で叫んだ。


 「……なぜ特別クラスの担任をあいつに任せたんだ」


 「校長、それは青木先生が希望してたからです」


 「どうして皆嫌がるのにおかしいなぁとは思っていたんだ」


 「校長先生、あとはお願いします。私達も自分のクラスがありますので」


 「いや、一人にしないでぇ!」


 

 



 そのころ、青木あおきめぐみは鼻歌交じりで廊下を歩いていた。


 「ふんふんふん♪ 夢にまで見た生徒たちのBLイチャコラ♪ 見た目は女の子♪ それって最強、最凶、最高っ♪ イェイ!」




 これはそう遠くない未来、男子禁制天如学園での物語である。


 周りが皆同性と気付かずに男子はみな、もんもんと学校生活を送るのである。


 そんな中一人、本物の女子はいた……。


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