第1階層編

第7話 城塞都市カルディア[第1階層編]


《第1階層:城塞都市カルディア》


〈カルディア〉は"城塞"という名前の通り大きな壁に囲まれた街になっており、商店や武器屋や酒場等のどんなものでも揃っているのだ。


 逆に言えば、モンスターが出てくるフィールドダンジョンは他の階層に比べて狭くなっており、初期のレベリングはかなりモンスターの取り合いになりやすいエリアだった。



「とりあえず、念には念をってことで……まずは武器屋だな」


 初心者の初期所有ゴールド(G)は1000Gである。


 この〈カルディア〉の武器屋で買える最も強い装備は"アイアンソード"であり、金額は2000Gだった。


 ちなみにオレはステータス以外に所持ゴールドもおかしく、5億Gあった。


 この5億Gも魔神王討伐の際の所持ゴールドとおなじであった。


 オレは武器屋に着くと、武器屋のNPCのおっちゃんに話しかけた。


「あの〜すみません。」

「やぁ!あんちゃんいらっしゃい!何か買ってくかい?」

「ああ、とりあえず〈アイアンソード〉2つ買いたいんだけど」

「〈アイアンソード〉2本やな。兄ちゃん景気がええなあ。じゃあ2本で4000Gやな!」


 オレは決済画面と表記された画面に手をかざし、"NOWなうNOWなう♪"という音と共に支払いを済ませた。



 【オンラインNOW!】ではNPCは言葉のやりとりを学び、より自然な会話ができるようシステムが働いているため、余程予想外の質問や声かけをしない限りは自然な会話が可能だった。


「まいど〜おおきに!」



オレは武器屋から離れた。


「よし、とりあえず必要なものは買えたな。装備すると目立つから流石にまだしない方がいいだろうけど……」



 装備画面に"アイアンソード"が2本入っていることを確認して、



 ○【アイアンソード】(E) [所持数:2]

 →その名の通りただの鉄の剣。装備者のATK(物理攻撃力)+30の効果がある。



 オレはソッと装備画面を閉じた。



「とりあえず人がフィールドに溢れかえる前に、少しでもモンスターを倒してレベルを上げておかないとな」



 MMORPGをしたことがある人なら分かるだろうか。


 当然ながら初期の頃のステータスは全員低く、装備もハッキリ言って弱い。

 その状態でソロでモンスターを討伐するよりも、

 クエスト等を受けながらとりあえずの寄せ集めでも、パーティーで攻略を進めた方が安全性も速度も段違いなのだ。


 オレはフィールドエリアの手前である城塞門まで移動し、パーティー募集がないか探した。



「えっと、君もパーティーメンバーを探してるのかな?」


 ふと声をかけられた方を見ると、茶髪で短髪の笑顔が眩しい青年に声をかけられた。


「あぁ、そうだ……じゃなくて、そうです」



 (あっぶな。全然パーティーなんて組んでこなかったから、いつもの口調になってしまった。ここは礼儀正しくしておかないと)



 パーティーを組む場合、他のメンバーへの礼儀を重んじることは大切なことなのだ。


「俺はタケルって言うんだけど、もしよかったら一緒にどうですか?」


 純粋にゲームを楽しもうとする目。

 出会ってほんの数十秒だが、それをタケルに感じたため好感が持てた。


「ぜひお願いします!」



 即答。オレはパーティに加わった。



「あ!新メンバーっすね。僕はルイっす!よろしくっす!」

「私はほむらよ。よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします。イザナです」


他のメンバーも優しそうな人たちばかりだった。



「パーティメンバーは5人までだから、後1人なんとか誘いたいな」

「結構パーティー組んでする人多いみたいっすから、取り合いになってるかもしれないっすよね」



 タケルとルイがそんな話をしていると、ちょうど近くで男2人組にかなりしつこめに勧誘されているのを、必死に断っている女の子の姿がオレたちの目に入った。


 大丈夫かと少し心配になったが、しばらくするとなんとか諦めてもらえたようだった。



「あの!私、あの子誘いたいです」


 と、ほむらが唐突に提案する。



「俺は構わないけど、あんなに嫌がってたってことは、ソロでしたいとかかもしれないぞ?」

「そうかもしれないけど。でもソロよりパーティーの方が楽しいと思いますし、私が誘いに行けば女子同士ってことで来てくれるかもしれないですし」


 そう言ってほむらは交渉に向かって行った。



 数分間の交渉の末、先程の女の子を連れてほむらが戻ってきた。


「交渉成立しました〜!」


「あ、あの誘っていただいてありがとうございます。かなでっていいます。よろしくお願いします」

「よろしく〜!」

「よろしくっす!かなでさんアバター可愛いっすね〜!」

「よろしくお願いします」

「ありがとうございます。よかった……優しそうな人たちで……」

「でしょでしょ〜。変な人たちはいないから安心してね」



 交渉の過程で少しでも仲良くなろうと、ほむらはかなでへの話し方は砕けた形にしてみたようだ。


 そしてルイがかなでへ可愛いっすねって言ったのも納得するくらい、確かにかなり可愛いと思った。



 今の内に少し声をかけて……。

 いやいや、紳士たるもの下手にナンパっぽいことはしないものだ、うん。


 パーティメンバーが5人に揃ったところで、オレたちは《城塞都市カルディア》のフィールドエリアへと出た。






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