【漫画原作】黒髪のシークと砂漠で恋におちて ― Burning Love in Desert ―

スイートミモザブックス

プロローグ 大切な日の始まり

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サンフランシスコの朝。ジェニファーにとって、今日は大切な日だ。社運を賭けた大プロジェクトの定例ミーティングの日だから。


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 灼熱のかげろうの向こうに、青空を幾何学模様のように切り取る、銀色の巨大な建物群が揺らめいている。ドーム状の基部から出たパイプがぐるりとめぐり、大きな円筒の側面をかけのぼってふたたび下におりると、熱砂を這いながら四角い建物へと吸い込まれていく。

 ああ、あれはわたしが設計したかわいいメタルのオブジェたち……。

 

 ピピピ、ピピピ、ピピピ。

 しつこく鳴る目覚ましの音に、ジェニファーは夢の世界から引きもどされた。

 また見たのね……。

 ため息とともに腕を伸ばし、ベッドサイドの時計を止める。このところ毎日のように夢を見る。

 夢。

 そう、たしかに夢だ。砂漠の灼熱の太陽を受けて輝く銀色の複合体。ジェニファーは起きているときもまったく同じ夢を描いている。そして、それが今、夢ではなくなろうとしていた。

 眠い目をこすりながらベッドから起き出し、バスルームに入った。ゆるやかに波打つ金髪を肩で軽く揺すってジェニファーは、鏡のなかの自分を見つめる。

「当分は恋もなしね。プロジェクトにかかりっきりだから」

 そう自分に言い聞かせる。海のように澄んだ青い瞳がじっとこちらを見返した。

 身支度をすませて、キッチンのオーブントースターに半分に切ったベーグルを入れた。あたりにコーヒーの香りが漂うころに軽く焼き上がったベーグルを取り出すと、好物のスモークサーモンとクリームチーズをはさんでテーブルに運ぶ。リビングの大きな窓から見えるサンフランシスコの空は、今日も晴れわたっている。木漏れ日が白いテーブルに光の模様を躍らせていた。

 このアパートメントに住んで四年。坂道の上から広く見渡せる、リビングルームの大きな窓が気に入っている。

 スタンフォードの大学院で環境工学を学んだジェニファーは、4年前にプラント設計の技術者としてエナジー・スター社に採用された。そして若干28歳にして、大抜擢されて社運のかかった重要プロジェクトの設計に参加を認められたのだ。

 今日は朝いちばんに、そのプロジェクトの定例ミーティングがある。

「さあ、今日も一日、がんばらなくちゃ」

 車のキーを片手に、ジェニファーは初夏の光あふれる路上へと足取りも軽く向かった。

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