Loop Novels Go Around

朝樹小唄

輪廻

あるところに男がいた。どうしても叶わぬ恋に胸が張り裂けてしまった彼は、このがらくたのような身を処分してしまおうと決めた。

最期の方法を思案すると同時に男は、同士を募れば最後の一手となる勇気が出るのではないかと思い付いた。つまりはこの期に及んで「怖いのでせめて誰かと一緒に死にたい」という情けないエゴが顔を見せたのだから、そんな自分を男は少し恥じたが、それよりも目の前の死の誘惑に勝てなかった。

俺は死ぬのではない、生まれ変わりへの一歩を踏み出すのだ。だからこれは前向きな生の営みだ。

男は鉛のように重くなり、今の自分の生を全否定している体を引きずりながら、ただそれだけを希望にしていた。

あまりにも永過ぎる数日をやり過ごしていたら、「生きている意味が無い」と絶望した女が一人見つかった。返事を出すと、詳しい事を訊くでもなく、女は「いいです、一緒に死にましょう」と諦めたように全てを受け入れた。


死体ですらどこか一箇所に留まり続けたくない、死んだその後はどこかへ流れていなくなりたい、という願いが一致した二人は、ひっそりとした河を目指した。

人里離れた河に架かる橋の上、本名すら不確かな女の冷えきった手を取り、欄干に立った。

「死のう」

もはや喉が声を出す事すら拒否していた。なんとか震わせた音もほとんど夜の闇に吸い込まれていく。女はやはり諦めたように、力なく俺の手を握り返した。

これで何もかも終われる。最後の力を振り絞った俺は女の手を引き、前のめりに倒れた。

死に至る冷たい水の中、男の脳には前世の死に際が駆け巡った。


脳裏に映る着物姿の女、


そうだ、俺は前もこの女と「来世は一緒になろう」といって水に身を投げたのだった。

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