コンビニの迷い子④

『平成××年十二月二十日 闇ノ沼やみのぬま幼稚園が全焼。児童十三名が焼死。出火の原因は放火と見られ、犯人は不明』


 闇ノ沼幼稚園の所在地と、グループマートの住所が合致した。高見沢の記憶にあった通り、グループマートは幼稚園の跡地に建てられていた。


 全焼事件があったのは、高見沢が怪奇町に戻ってくる四年以上前のこと。全国ネットのニュースでも取り上げられたようだが、高見沢には見覚えがなかった。


 コンビニに現れた男の子は、四〜五歳ほど。幼稚園に通う子の年齢と一致する。


 これは、あくまで高見沢の想像だが、あの男の子はかつて闇ノ沼幼稚園に通っていた児童の一人ではないだろうか。焼死した児童の一人。死んで魂だけの存在となったが、今でも子どもの時の気持ちを持ったまま、遊び相手を探している。


 コンビニにいるのはあの子だけでないかもしれない。残り十二人の子も、幽霊となってさまよっている。そして彼らの遊びに付き合うと、生身の肉体ではたない……明里が話してくれたかつてのアルバイトのように、全身を引き裂かれてしまう。


 呪い、と表現するのは適切ではないかもしれない。きっと子供たちは誰かを恨んでいるわけではない。犯人もわからないのだから。


 ただ遊び相手を求めている。純粋な心で。今も自分たちの死に気づかぬまま。


 あの男の子の背景に、悲しき事情を垣間見た。


----------


 それから高見沢は、一週間ほどアルバイトを休んだ。採用されて早々休むのは少しばかり心苦しいものがあったが、自分の小説、もとい幽霊となってさまよう子供たちのため仕方がなかった。


 放火事件のことを知り、自分にできることはないかと考えた高見沢。小説家である自分にできること。その答えを出し、実行するまでに一週間という時間が必要だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る