第02話 触手の舞い散る季節に
居候
高校生活にも慣れてようやく落ち着いてきたわたしの日常は、宇宙からの訪問者である触手星人のリリー・テンタクルによって侵食され始めた。
乗ってきた宇宙船が自宅の2階にあるわたしの部屋に墜落し、宇宙船の修理が終わるまでの間、2階の空き部屋を借りて我が家に居候を始めたリリー。
触手星人の日常生活はわたし達とあまり大差はなく、朝起きて夜になったら寝るし、食事も事前に食材をチェックしただけでその後は何の抵抗もなくお母さんの料理を食べている。
触手星人も入浴はするけどなぜかリリーは一緒にお風呂へ入ろうと誘ってくるし、わたしが入浴中に全裸で飛び込んでくることがこの数日の間に何度かあった。
リリーは裸を見られることに抵抗がないようで堂々と全裸で家の中を歩き回ってしまい、その度にお母さんから注意をされている。
リリーの行動は目に余ることが多いけど、一番厄介なのはリリーが頭から伸ばしてくる〝触手〟だ。
触手星人の髪に見える部分は髪の毛ぐらいの細さがある触手器官が集まった〝触手髪〟と呼ばれるもので、触手器官を束ねてある程度の太さを持たせればミミズやウナギなどを思わせる〝触手〟に変化する。
自由自在に動く触手に一度絡みつかれると拘束されて身動きが取れなくなってしまう。
リリーの触手は獲物を狙うヘビみたいに鎌首をもたげ、その長い体にヌルヌルの粘液をまとわせて襲い掛かってくる。
もちろん触手髪を操っているのはリリーであり、当人は触手星人の愛情表現だと言っていたけど地球人であるわたしにとっては迷惑な行為だった。
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