試験前。

 慌ただしい日々を過ごしているうちに、期末試験の季節がやってきた。春休みの思い出はついこの間のような気がするが、もうそんな時期か、と俊はため息をついた。前期は有り体ありていに言うと真面目な学生ではなかった。

 当然といえば当然だ。恋だのなんだのと振り回され……いや、振り回していたのは自分自身だったか。

 

 2回生ともなると多少の油断がでてきてしまう。一年前の今頃は、比較的に真面目に学んでいたと俊自身は思っていた。

 いくつかの授業でサボったコマがある。試験はノートの持ち込みは可のようだったので、できるだけ早く入手しておきたい。当てを頭の中で探っていると、ふと肩を叩かれた。振り返るとそこには悪戯っぽい笑顔を浮かべた猿渡がいた。

「よ!試験だな、お前、ノートとか足りてるか?」

「いえ、実は少し足りないところがあって……」

「だと思ったんだよなぁ。お前、最近ちょーっとばかし、不真面目だったんじゃね?」

「そのとおりで」

「コピーしてやんよ。来期はしっかりやれよなぁ」

「ありがとうございます!!」

 猿渡とは同じ学部だ。学年は違うが、授業の内容はほぼ同じだろう。ノートのあてを見つけ、これで安心だ。


 コピーの受け取りについて話そうかと思うと、

「猿渡先輩、あたしもコピーほしいです!」

「俺も!」

 などとすっかり後輩たちに取り囲まれていた。親しまれている猿渡らしい風景。意外と丁寧な面も持っているので、ノートも恐らく整ったものだろう。請われるのも当然だ。


 あとでメールすることにして、俊は学生食堂に向かうことにした。少々昼食には早いが、今のうちなら混雑に巻き込まれないで済む。

 なにを食べようか。色々思い浮かぶが迷ってしまう。券売機で惑わないためにも事前に決めておきたいが……。

 綾か沙耶がいれば「同じもので」で済むんだがなぁ、と俊は思った。

 

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