日米開戦せず

第一話 マイキーズ・テレビショウ

――1952年10月7日 NAN「マイキーズ・テレビショウ」より


司会「こんばんは。マイキーズ・テレビショウのお時間です。今日のゲストはウィルキー前大統領閣下です」

ウィルキー「どうぞよろしく、マイキー。画面で見る以上に男前だね」

――堅く握手をかわす前大統領と司会。

司会「ありがとうございます。さすがは前大統領、お世辞も上手い」

ウィルキー「お世辞ではないよ。君の事はうちの娘もお気に入りでね」」

司会「それは光栄です。さて、前大統領閣下。こちらの架空戦記はご存じですか?『合衆国よ勝利せよ』という、元合衆国海軍少将で有名な空想科学SF小説家、ロバート・A・ハインラインの小説です」

ウィルキー「ええ、存じていますとも。私も読みましたが、なんとも荒唐無稽ですな。

司会「あなたのライバルであったフランクリン・D・ルーズベルトが大統領選挙に勝利し、連邦政府は対日石油、くず鉄禁輸措置を断行。それに追いつめられた日本が、パールハーバーを空母機動部隊で奇襲。我が海軍は壊滅状態に陥るも、再建した艦隊によって日本軍を追いつめ、ついにはトウキョウとコクラへの反応兵器投下とソ連軍参戦により日本を降伏に追いつめる…ざっと説明させていただきましたが、こんなストーリーでした」

ウィルキー「そうそう、そんな話でしたな。反応兵器などという非人道的兵器を、一般市民の頭の上に落とすなど、合衆国がする訳がない。我々をナチと同一視しているのではないかとさえ思ったね」

司会「さあ、それはどうでしょうか。ともあれ、最近この小説の影響なのか、日英連合と独ソ共産枢軸で行われたあの第二次世界大戦に、我が国は参戦すべきではなかったかという議論が最近流行っています」

ウィルキー「馬鹿げた議論です。戦争で数十万人もの若者を死に追いやることが正しかったと?我が国はあの戦争に参戦せず、無傷で切り抜けた外交を誇るべきなのですよ」


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